【今週の☆☆☆】山田孝之がシングルファザーを演じる『ステップ』、神父の児童性的虐待事件を描く『グレース・オブ・ゴッド』など、週末観るならこの映画!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、7月17日(金)から今週末の公開作品をピックアップ。妻に先立たれた男が、娘と過ごす10年間を描くヒューマンドラマや、鬼才フランソワ・オゾンの新境地ともなった実話ベースの衝撃作など、バラエティあふれる3本がそろった!
毎日を一生懸命生きている人たちへの「応援歌」…『ステップ』(7月17日公開)
「とんび」「流星ワゴン」などで知られる重松清の同名小説を映画化した本作は、結婚3年目で妻に先立たれ、1歳半の娘をひとりで育てることになったシングルファザー・健一の10年間を、子どもの成長と周りの人たちとの交流を通して描いたハートウォーミング・ムービー。仕事と子育ての両立、娘の保育園デビュー、小学校で母親の絵を描いてくる課題を出された娘のサポート、成長して娘が自分と距離を置くようになる寂しさ、健一の新しい恋…父と娘がたどるそんな数々出来事を、この映画では山田孝之が「全裸監督」とは真逆の受けの芝居でリアルに体現。娘を年齢ごとに演じ分けた3人の子役とのかけあいも微笑ましい。しかも、義理の両親(國村隼、余貴美子)や義兄(角田晃広)、昔の上司(岩松了)との距離感や優しさも丁寧に描かれ、飯塚健監督(『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』)ならではの笑いも随所に挿入されているから、ウェットになりがちな題材なのにほっこりする仕上がりに。悪い人がひとりも出てこないし、現実はもっと厳しいと言う人もいるかもしれない。けれど、これは子育てや仕事、毎日を一生懸命生きている人たちへの「応援歌」。観たら、きっと勇気をもらえるはずだ。(映画ライター・イソガイマサト)
トラウマに苦しむ男たちの勇気ある告発の行方は‥『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(7月17日公開)
鬼才フランソワ・オゾンの新作にして、初めて“実話の映画化”に挑んだ衝撃作。現在も係争中の「神父による児童への性的虐待事件」を真っ向から描く。
勇気ある一人の告発に端を発し、80人もの被害証言が集まった当の事件。長年、疑惑を周囲も感知しながら、そのたびに教区を変えて神父として赴任し続けた、つまり被害少年を増やし続けたという驚くべき事実に、声を失ってしまう。何より心に刺さるのは、何十年経っても虐待のトラウマに苦しみ、簡単には声を上げられない大の男たちの姿。痛みにうめきながら告白する姿に、震えずにいられない。一方、フィクションとして描くことにより、主人公に据えた3人の男たちの家族関係に漂う緊張、秘密、諍いという心理サスペンスをバランスよく仕込み、観る者の心を鷲掴みにする。正直、オゾンの新作を心待ちにする身としては、彼独特の毒や皮肉や“惑わし”が完全封印されたことに微妙に肩透かしをくう気はするが、“実話”に全身全霊で真摯に取り組んだ渾身の直球勝負に、感服、賞賛せずにいられない。(映画ライター・折田千鶴子)
63歳の主婦が、自らの人生を探す旅へ!『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』(7月17日公開)
人生、まだまだこれから!一歩、踏み出す後押しをしてくれるスウェーデン発のヒューマンドラマ。専業主婦歴40年、63歳のブリット=マリー。無口な夫と変わりばえしない生活を送っていたが、ある日、夫の浮気が発覚。ショックを受けた彼女はスーツケース一つで、見知らぬ土地での新生活に踏み切る。世界的ベストセラーである原作を手掛けたのは日本でもヒットした『幸せなひとりぼっち』のフレドリック・バックマン。本作はまさにその女性版といえる。年齢を重ねるごとに狭くなりがちな世界。でも、意固地にならずに新しい出会いや交流を受け入れれば、自分にちょっとした変化が訪れ、自ずと豊かな未来が開けてくる。主人公を演じるのは、『スター・ウォーズ』シリーズでアナキンの母シミを演じたベルニラ・アウグスト。ブリット=マリーがこなす完璧な家事の手際や愛らしい北欧インテリアなど、隅々まで行き届いたセンスも見ていて爽快。(映画ライター・髙山亜紀)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス