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尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『時をかける少女』『さびしんぼう』…いまも残る大林映画の“聖地”をめぐる

コラム

尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『時をかける少女』『さびしんぼう』…いまも残る大林映画の“聖地”をめぐる

『転校生』

あの階段と対面!
あの階段と対面!

ひょんなことから体が入れ替わってしまった中学生の男女の葛藤や成長を描いた『転校生』は、大林監督が初めて尾道を舞台に撮影した作品で、のちに「尾道三部作」の1作目として数えられることになる、青春映画の傑作だ。

中学三年生の斉藤一夫(尾美としのり)のクラスに転校してきた斉藤一美(小林聡美)は、かつて家が近所だったという理由で一夫につきまとう。その日の帰り道、一美はあるきっかけで神社の階段から落ちそうになり、側にいた一夫ともどもころげ落ちてしまう。意識をとり戻した2人は、身体が入れ替っていることに気がつき…。

おれがあいつで、あいつがおれで…
おれがあいつで、あいつがおれで…

これまでに無数のパロディを生みだしたファンタスティックな入れ替わりシーンが撮影されたのは、尾道駅から徒歩約20分、1000年近くの歴史を誇る御袖天満宮だ。
実際に足を運んでみると、40年を経てなお映画とほぼ変わらない姿に驚かされる。
本当に転がったら死ぬな…と思わせる、55段におよぶ立派な石段を映画のようにリズミカルに上がっていけるのは、一夫や一美と同じく体力がありあまった中高生だけだろう。
なお、学問の神様として知られる菅原道真公を祀っているため、受験シーズンには学生で賑わうのだという。その時期に訪れる方は、くれぐれも“転げ落ちる”…などと漏らさぬよう注意してほしい。

40年変わらぬ佇まいの「茶房こもん」
40年変わらぬ佇まいの「茶房こもん」

御袖天満宮を出てロープウェー乗り場の方面に5分ほど歩いていくと、観光客に人気の喫茶店「茶房こもん」がある。
オーナーの大谷治さんは『転校生』から『海辺の映画館』まで、尾道で制作部や現地コーディネーターとして大林組を支えてきた人物で、今回の取材では記者らの案内役も務めてくださった。
モダンな店内は幾度となく大林映画に登場しており、『転校生』では一夫と一美が話すシーンで外のテーブルが登場したり、入江若葉演じる母親と一美が水着を買いに行った帰りのシーンで店内が使われたりしているが、現在も内装は『転校生』当時とほとんど変わっていないそうだ。
なお、名物のワッフルは『転校生』の劇中でも確認できるが、甘さ控えめで絶品。大林ファンならずとも、ぜひ一度立ち寄ってほしい。

一夫の家として使用された一軒家
一夫の家として使用された一軒家

「茶房こもん」を出て一旦市役所を目指し、そのまま東に200m歩くと、一夫の家として使用された、日本建築の一軒家が海沿いに見えてくる。
公式のロケ地マップにも記載があるため、外観の見学や撮影は可能だが、聞けば現在も住人の方が住まれている民家なのだそう。味わい深い外観をサッと拝見するのみにとどめたい。

一夫の家を背にそのまま駅方向に歩いていくと、『転校生』を観た人ならば「あっ」と思うはずだ。一美が、一夫が乗ったトラックを追いかけ、一夫は助手席からその姿を8ミリで撮るラストシーン、その時一美が見た風景そのものが、目の前に広がっているのだから。

ラストシーンの名台詞が蘇る
ラストシーンの名台詞が蘇る
写真/黒羽 政士



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