『うみべの女の子』原作者・浅野いにおとウエダアツシ監督が対談「同世代だからこそできた映画」
人気漫画家、浅野いにお原作の実写映画化作品としては、宮崎あおい主演の『ソラニン』(10)以来11年ぶりとなった『うみべの女の子』(公開中)。この企画を持ち込んだのは、長編初監督作『リュウグウノツカイ』(14)以降、生き生きとした青春映画を紡いできたウエダアツシ監督だ。浅野は完成した映画について「僕はこういう映画が観たかった」と賛辞を送ったが、そうなったのには理由があった。共に40代前半である浅野いにおとウエダ監督が「同世代だからこそできたコラボレーション」と語る本作の舞台裏をたっぷりと語ってくれた。
海辺の田舎町で暮らす中学2年生の小梅は、憧れの三崎先輩にこっぴどいふられ方をして自暴自棄となり、以前に告白された同級生の磯辺と衝動的に初体験を済ませる。その後も、2人は何度も身体の関係を持ち、友だち以上だが決して恋人ではないという奇妙なつき合いを続けていく。
オーディションで小梅役と磯辺役のW主演を勝ち取ったのは2人の俊英だ。『イソップの思うツボ』(19)の石川瑠華と、主演映画『暁闇』(18)で「MOOSIC LAB 2018」男優賞を受賞した青木柚だ。
「いろんな障害があるのは目に見えていたけど、これを映画化したいという気持ちのほうが勝っていました」(ウエダ)
――浅野さんの作品としては『うみべの女の子』が11年ぶりの実写映画となりましたが、その経緯から聞かせてください。
浅野「ずいぶん久しぶりになりましたが、本当にこの10年間、まったく実写化の話が来なかったんです(笑)。 『うみべの女の子』については、ウエダ監督のように当時若かった読者が仕事を回す世代となり、ようやくその機会に恵まれた感じがします」
ウエダ「僕自身も浅野さんのファンですが、それはコミックの完成度が高すぎて、実写化するのが難しいからだと思います。でも今回僕は、果敢にチャレンジしました(笑)」
――思春期の性を描く本作なので、R15+指定の映画になるのは必然ですが、そこもわかったうえでトライされたわけですね。
ウエダ「確かに僕らと同世代の人たちがプロデューサーになったことで、自分が本当に作りたいものを提案できるようになりました。10年前に原作が発売された当時の年配のプロデューサーだったら、この企画は難しかったかもしれない。でも、僕たちはエロにもまったく抵抗がない世代だし、いろんな障害があるのは目に見えていたけど、それでもこれを映画化したい、自分もそういう映画を観たいという気持ちのほうが勝っていて、それはプロデューサー陣も同じ想いでした」