“早世の音楽家”ヨハン・ヨハンソン。その功績に映画音楽から迫る
2018年2月9日に逝去した世界的な音楽家、ヨハン・ヨハンソン。48年という短い生涯のなかで数多くの名曲を作曲したヨハンソンは映画音楽の分野でも輝かしい実績を残している。特に、『DUNE/デューン 砂の惑星』(10月15日公開)が控えるドゥニ・ヴィルヌーヴとは、『ボーダーライン』(15)、『メッセージ』(16)といったエポックメイキングな作品でその才能を発揮してきた。そんなヨハンソンが生前に監督を手掛けた最初で最後の長編映画『最後にして最初の人類』の公開に合わせ、功績を映画音楽にフォーカスして振り返りたい。
『博士と彼女のセオリー』でゴールデングローブ賞受賞&アカデミー賞候補に
ビョークやシガー・ロス、ムームらとともに、北欧アイスランドを代表するミュージシャンとして活動してきたヨハンソン。彼がその名を知られるきっかけになったのが、2002年に発表したソロデビューアルバム「エングラボルン」で、彼の代名詞とも言えるクラシックのオーケストラサウンドに電子音を組み合わせた音楽スタイルで大きな注目を集めた。その実験的な音楽性は、友人であり、同じく映画音楽も手がけるマックス・リヒターとともに「ポスト・クラシカル」と称されている(本人はそう定義づけられることを好まなかったそうだが)。
2006年になるとデッド・カン・ダンスやディアハンター、ピクシーズらも所属したイギリスのインディー系のレコードレーベル、4ADから「IBM 1401 A User’s Manual」やオーケストラアルバム「フォードランディア」をリリース。2016年にはリヒターも作品を発表しているドイツのクラシック系のレーベル、ドイツ・グラモフォンへ移り、最後のソロアルバムとなった「オルフェ」を発表している。
ヨハンソンの才能は映画音楽の分野でも発揮され、ミシェル・ファイファー&アシュトン・カッチャー共演のサスペンス『ラブ・クライム』(09)やアメリカの前衛的な映像作家、ビル・モリソンの『The Miners' Hymns』(10)などに参加。そして、スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた『博士と彼女のセオリー』では、第72回ゴールデングローブ賞の作曲賞に輝いたほか、第87回アカデミー賞の同賞にもノミネートされ、名声を確固たるものにした。