北村匠海、佐野勇斗、森崎ウィン…いまキテる“EBiDAN”俳優って?
人気作家、カツセマサヒコのデビュー作を若手実力派キャストで実写化した『明け方の若者たち』(公開中)。本作で主演を務めるのは、『君の膵臓をたべたい』(17)でたちまち人気に火がつき、その後『君は月夜に光り輝く』(19)、『東京リベンジャーズ』(21)など多くの話題作で主演し、さらに第41回日本アカデミー賞では新人俳優賞を受賞した北村匠海。「猫」で第72回NHK紅白歌合戦にも出場するダンスロックバンド「DISH//」ではボーカル&ギターも担当する北村だが、彼が所属する「恵比寿学園男子部」、通称“EBiDAN”には、北村のみならず多くの新進気鋭俳優たちが顔をそろえている。昨年からはEBiDAN総出演で、ドラマやライブなど様々なメディアを展開する「FAKE MOTION」も開始し、ますます勢いを増している。そこで本コラムでは、EBiDAN所属、出身俳優の魅力があふれる作品をピックアップしてみた。
男女の“リアル”を描く、北村匠海出演『明け方の若者たち』
まずは、黒島結菜、井上祐貴との共演で贈る北村主演の最新作『明け方の若者たち』。北村は、黒島演じる“彼女”にのめり込みつつも、人生に悲観する“僕”を演じており、彼女という存在を見つけ満たされながらも、心のどこかで理想と異なる現実に打ちのめされていく。
少女マンガのようなきらめいた恋愛模様でも、“大人の恋”的な泥沼な物語でもない。彼らによって生みだされるのは、「あったな~」と思わされてしまうような男女の出会いから別れまでの話。そんな、“なんてことない”を“なんてことない”まま表現できるのが、北村匠海なのだろう。笑った顔も思い悩むような顔もどこまでも生々しくリアルに表現し、人生に思い悩みがちな時期にある青年の心の機微を体現できるからこそ、決して特別じゃない男女の日常を作りだすことができるのだ。終わりへと向かっていく“いま”、そして変わってほしくても変わらない“いま”に翻弄される“僕”の苦悩に、共感せずにはいられなくなる。
感情豊かな好青年…佐野勇斗出演『ちはやふる -結び-』(18)、『小さな恋のうた』(19)
北村に負けず劣らずの活躍を見せるのが、佐野勇斗。2016年放送のドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」で注目を集めて以降、多くのドラマや映画に出演している。EBiDANでは、ダンスボーカルグループ「M!LK」のメンバーとして活躍しているが、彼の出演作で特に印象的だったのが『ちはやふる -結び-』。佐野は、本作で初登場となった筑波秋博を演じており、原作で“クセが強い”と評される難役を見事に自らのものに。筑波のおなじみである、舌をペロリと出し自信を露わにする表情もばっちり再現し、シリーズ3作目での登場ながらしっかりと存在感を残した。第28回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞した本作は、佐野にとって代表作の一つとなった。
佐野が出演する青春群像劇でもう一つ、MONGOL800の同名楽曲をモチーフとした『小さな恋のうた』も外せない。沖縄を舞台にバンド活動での成功を夢見る若者が、様々な困難に阻まれながらも前に進んでいく姿を描いた本作では、主人公の真栄城亮太を演じている。夢の成就に期待して胸を弾ませていたところで仲間との永遠の別れを経験し、立ち止まりたいという想いと、仲間の想いを引き継ぎたいという葛藤に身悶える姿に、思わずこちらも胸が苦しくなる。なお、共演の森永悠希、真栄田郷敦、鈴木仁、山田杏奈らと共に小さな恋のうたバンド、通称“ちい恋バンド”を結成しCDもリリースするなど、アーティストとしての面がフルに生かされる形となった。