安彦良和監督が惚れ込んだ、新人声優・廣原ふうとカーラ役との思わぬ共通点「役柄までぴったりだったとは」
6月3日より公開され、初週の週末興行収入が3.9億円と好成績収めている『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(公開中)。テレビアニメ「機動戦士ガンダム」の第15話を映画化した今作は、モビルスーツ戦のかっこよさだけでなく、戦争の残酷さや儚さ、戦争下での日常なども描かれており、「機動戦士ガンダム」で扱われたモチーフがギュッと詰まっているとも感じられる。そんな作品の魅力について、島に暮らす子どもたちにとって母親のような存在の少女、カーラを演じた声優・廣原ふうと監督の安彦良和に話を聞いた。
「廣原さんは声が新鮮で、いい人が見つかったなと思いました」(安彦)
――お2人ご一緒に取材を受けるのは初めてと伺いました。
安彦「初めてですね」
廣原「そうですね、お会いするのはアフレコ以来になります」
――初めてお会いした時のお互いの印象を教えてください。
廣原「安彦監督は空気感が非常に柔らかい方で、ガチガチに緊張して現場入りをしていたので、本当に安心して、ほっとすることができました」
安彦「新鮮でいい人が見つかったなと思いました。芸歴がほとんどなかったんだよね。変な言い方だけど『この声で、ちょっとそれはいいな。拾いものだな』と(笑)。だから、デビュー作になってくれるのかもしれないなと思ってね。まあ、いつにしてもそうですが『デビューしたのはあなたの作品でした』と言われるとこっちも鼻が高いので(笑)」
――廣原さんご自身は「ガンダム」をご存じでしたか?
廣原「もちろん知っていたのですが、作品をしっかり観たことはなかったので、オーディションの合格通知をいただいてから『機動戦士ガンダム』を第1話から全部観させていただきました。迫力あるロボットの対戦をあまり観たことがなかったので、それも新鮮だなと思ったのですけど、内容がしっかり戦争のお話で深いところまで描かれていて、なんでいままで観てこなかったんだろう…という感想を抱くくらい、これは観ないといけない作品だなと思いました」
安彦「全部観たの?それは大変だったね」
――今作の台本を読んで廣原さんはどう感じましたか?
廣原「子どもたち(の人数と出演シーン)がテレビアニメよりも増えたことで 、雰囲気というか、こういう厳しい暮らしのなかでもみんなが助け合って精一杯生きている世界というのがより強く感じました。子どもたちも一人一人個性豊かなので、そこも見どころですね」
――完成した作品を観ていかがでしたか?
廣原「私が収録させていただいた際には、まだほかの子どもたちの声が入っていない状態だったので、初めて完成した映像を観た時に声を聞かせていただいて、泣いちゃう子がいたり、その子の面倒をみる子がいたり、役割がしっかりしていて、すごく楽しいシーンになっているなと感じました」
安彦「子どもたちの声を実際の子どもたちに当ててもらっていますが、これが正解で、上手かったですよ。みんなでマイクを囲んでというのはできなかったので、抜き録りになったのですが。廣原さんと一緒にやっていたらどうだったかな。それもまたいい味が出ていたかもしれません」
――20人の子どもたちが食事をするシーン は印象的でしたが、絵コンテは(副監督の)イム ガヒさんが担当されているのですよね。
安彦「最初の食事のシーンをイムさんがやってくれました。結構面倒臭いですよ、子どもたちではなく、キャラクターとして特定しなくちゃいけないから。ここには誰がいてなにをするか、アニメーターさんに任せるわけにはいかないもんね。だから、演出も大変だし、作画も大変だったと思います」