Official髭男dismの楢崎誠に単独インタビュー!『異動辞令は音楽隊!』主題歌制作秘話やバンドへの想いまで
国内外の映画祭、映画賞を受賞し、ロングラン大ヒットとなった映画『ミッドナイトスワン』(20)の内田英治監督の最新作『異動辞令は音楽隊!』(8月26日公開)。本作は、阿部寛演じる鬼刑事、成瀬司が、数々の問題行動により、ある日突然広報課内にある音楽隊への異動辞令を命じられる、という涙と笑いの人生大転換エンタテインメント作品だ。
軽やかなイントロが映画のラストと心地よくマッチする主題歌「Choral A」。その作詞・作曲を担当したのは、Official髭男dismの楢崎誠だ。映画の主題歌の作詞・作曲をするのは初めてだという楢崎は、警察音楽隊でサックスを演奏していたという経歴が縁を呼び、オファーをもらったという。MOVIE WALKER PRESSではそんな楢崎に、単独取材を敢行。最初は少しだけ緊張した様子ではにかみながらも、真摯な姿勢で作品と向き合った映画主題歌の曲作りや、音楽隊やバンドの経験から身についたチームの大切さ、今後の展望についてなどを語ってくれた。
「自分でできないところは人に頼ってなんぼという自分哲学がある」
楢崎は普段から“自分のために曲を作る”ことへの欲望があまりなく、人やお店や作品などを見て、そのために曲を書いたらどうなるか、表現したらどうなるかということに対して興味があり、曲作りを行うことが多いそうだ。今回の楽曲制作について、「最初は不安だったんですけど、僕のなかでもすごくよい経験になると思いました」と話し始めた楢崎は、自身が音楽隊で演奏していた時の経験を思い返しながら脚本を読み、映画のなかに内包されている感情や、共感するシーンなどから曲作りを進めていったのだそう。
「ドラムイントロでありたいということと、楽しい音像でありたいというイメージが一番最初に浮かびました。歌に入った時は歌詞を大事にしたいと思って、脚本を読んだりラッシュ(完成前の本編)を観たりしながら、セリフやシーンから連想される映画や漫画、楽曲とかを探して、共感できる言葉を調べていきました。そのなかで共通して感じたのが、“後悔”をリアルに感じているのは自分一人しか居ないということ」と振り返る。
劇中では、刑事として現場一筋30年で仕事ばかりに打ち込み、顧みなかった家族との関係性を考え直す成瀬や、清野菜名が演じる、仕事と子育ての両立に悩むシングルマザーの春子など、「これでよかったのか」「このままでいいのか」と人生の課題に直面する登場人物たちの姿が描かれているが、「映画のなかでもいろいろなキャラクターがいろいろな後悔をしていると思うんです。それを自分のなかで噛み砕いて。いま自分がいる場所で、次はどんなことをすればいいのかとか、こういうふうにしようと頑張っている姿を感じたので、そこから言葉を選んでいきました」。
そして、映画の内容とリンクする音楽隊での経験は、チームであることを大切にしているOfficial髭男dismでのバンド活動にも活きていると続ける。
「僕だけで完結できることは少ないんです。自分でできないところは人に頼ってなんぼという自分哲学があるので、できることはできる人に頼む、そして自分のできることをするという方が、自分には合っていると思うようになりました」。
また、プレイヤー同士のコミュニケーションでは「曖昧な言葉でやっていい時と、やってはいけない時があるんです」と続け、その理由を聞くと「僕のなかで曖昧なのであれば、“曖昧なんだけどこんな感じ”とちゃんと伝えて、“こういうふうにしたい”という考えが少しでもあるのであれば、“こういうアイデアがあるんだけど”と、具体性があることを伝えるようにしています。自分の表現したいことを大事にするのではなく、作品としてよくするために、悪いエゴといいエゴをちゃんと分けるようにしています」と制作時に大切にしていることを教えてくれた。