『スタンド・バイ・ミー』や『少年時代』『サバカン SABAKAN』まで…少年の“冒険と成長”映画
1986年の長崎を舞台に、小学5年生の久田(番家一路)と竹本(原田琥之佑)が海へイルカを見に行く冒険の旅を描いた『サバカン SABAKAN』(公開中)。交通手段の自転車が壊れ、不良たちに絡まれるなど散々な目に遭いながらも、旅先で出会ったお姉さんにほのかな憧れを抱く、カッコ悪いが忘れられない少年2人の小さな冒険旅行の顛末を、これが初監督の金沢知樹が瑞々しいタッチで映しだしている。この映画と同じく、少年たちの冒険と、それに伴う成長を描いた映画を紹介しよう。
少年たちの冒険を描いた映画と言えば…『スタンド・バイ・ミー』
『サバカン SABAKAN』はいまや作家になった久田(草なぎ剛)が、自分の少年時代を思い出すところから物語が始まる。これと同じく作家が少年時代の冒険を語り始めるのが、ロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』(86)だ。スティーヴン・キングの小説を原作にしたこの映画では、主人公がオレゴン州キャッスルロック(キングのファンには有名な架空の町)での、1959年の夏を思い出していく。
主人公のゴーディ(ウィル・ウィートン)やガキ大将のクリス(リヴァー・フェニックス)など12歳の仲間4人組は、30km先の森の奥に列車に轢かれた死体があることを聞きつけ、それを最初に見つけて英雄になるために“死体探し”の旅に出る。旅の目安は線路だけなので線路沿いに進んでいくと、鉄橋を渡る時には列車に轢かれそうになり、クリスが持ってきた拳銃をお守りに心細い野宿も経験する。この野宿の場面で文章を書く才能を周りに認めてもらえないゴーディと、実は頭がいいのに勉強をさせてもらえない環境にいるクリスが、互いの胸の内を語る場面も印象的。彼らが友情と勇気で数々の困難を乗り越えていく様が、ノスタルジックな雰囲気と相まって魅力的なキッズムービーの名編になっている。
些細な好奇心が他人を思いやる気持ちへと成長していく『夏の庭-The Friends-』
イルカや死体など、少年たちはなににでも興味を示すが、相米慎二監督の『夏の庭-The Friends-』(94)で小学6年生の3人組が興味を抱くのは、人間が死ぬ瞬間。彼らは近所で一人暮らしをしている三國連太郎扮するおじいさんの死を見届けようと、彼の生活を交代で見張ることにする。
最初は恐怖の対象でもあったおじいさんと親しくなった彼らは、おじいさんが戦地から戻ったあと、奥さんの前から姿を消した過去があることを知る。彼らはおじいさんの奥さん探しに奔走するが、奥さんはすでに亡くなっていた。それでもおじいさんの心残りを取り除いてあげようと奮闘する小学生たち。人間の死への興味から入って、生きているおじいさんの想いへとたどり着く、少年たちの心の成長がほのぼのと描かれている。