濱口竜介監督作が2年連続の選出!オバマ元大統領が選ぶ2022年ベスト映画の注目ポイントとは?
エンターテインメントファンの間で年末の風物詩となりつつある、バラク・オバマ元大統領の映画・音楽リスト。ホワイトハウス時代から夏休みのサマーリーディングリストやプレイリストを公開していたオバマ氏は、大統領退任後から年末にその年のお気に入り作品を発表するイベントを続けている。オバマ氏のSNSで発表された2022年のリストには、17本の映画が記されている。
2021年のリストには濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(21)やデンマークのヨアキム・トリアー監督の『わたしは最悪。』(21)、ボスニアのヤスミラ・ジュバニッチ監督の『アイダよ、何処へ?』(21)など、外国語作品も選ばれていた。『パラサイト 半地下の家族』(19)以降、アメリカの映画業界で外国語映画の人気・需要ともに高まっているのは、アカデミー賞など賞レースの傾向からも明らかだ。
2022年のリストには、『ドライブ・マイ・カー』に続き、濱口監督の『偶然と想像』(21)が入り、韓国のパク・チャヌク監督『別れる決心』(2023年2月17日公開)、フランスのセリーヌ・シアマ監督『秘密の森の、その向こう』(21)、同じくフランスのオードレイ・ディヴァン監督『あのこと』(公開中)、イランのアスガー・ファルハディ監督『英雄の証明』(21)、同じくイランのパッナ・パナヒ監督『Hit The Road(英題)』(21)、スペインのフェルナンド・レオン・デ・アラノア監督『The Good Boss(英題)』(21)の7本の外国語作品が入っている。
オバマ氏がこれまでに選んだ外国語作品は、2018年にはイ・チャンドン監督の『バーニング 劇場版』(18)、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』(18)、是枝裕和監督の『万引き家族』(18)の3本、2019年にはジャ・ジャンクー監督の『帰れない二人』(18)、マティ・ディオップ監督の『アトランティックス』(19)、シーロ・ゲーラ監督とクリスティーナ・ガジェゴ監督の『夏の鳥』(18)、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』、クリスティアン・ペッツォルト監督の『未来を乗り換えた男』(18)の5本だった。
2020年にはカンテミール・バラーゴフ監督の『戦争と女の顔』(19)、クレベール・メンドンサ・フィリオ監督とジュリアーノ・ドルネレス監督の『バクラウ 地図から消された村と戦争』(19)、アレクサンダー・ナナウ監督のドキュメンタリー映画『コレクティブ 国家の嘘』(19)の3本であり、14から18本選ばれるなかで外国語作品の占める割合が増えているのは、アメリカで“シネフィル”と呼ばれる人々の趣向の移り変わりとも一致する。
英語作品のリストには、スティーヴン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』(2023年3月3日公開)、ジーナ・プリンス=バイスウッド監督の『The Woman King』、ザ・ダニエルズの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年3月3日公開)、 ジョセフ・コシンスキー監督の『トップガン マーヴェリック』(公開中)、トッド・フィールド監督の『Tar』など、すでに発表されている映画賞などでも評価を集めた作品が選ばれている。
政界引退後にミシェル・オバマ夫人と共に立ち上げ、Netflixと作品供給契約を結ぶ映像制作配給会社Higher Groundの『クロティルダの子孫たち -最後の奴隷船を探して-』(22)も、「当社制作なので贔屓目ですが」との注釈入りで選んでいる。同プロダクションの第一弾作品『アメリカン・ファクトリー』(19)は第92回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞、翌年の『ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け』(20)も同賞にノミネートされている。