野性的なヴァイキング役がハマりすぎ!悲願を叶えた『ノースマン』アレクサンダー・スカルスガルドに迫る
人間であることを捨て、獣のような暴れっぷりを披露!
冒頭で言及したように、スカルスガルドにとってヴァイキング作品を作ることは長年の夢だった。10年以上も前から本作の構想を練り始め、「トゥルーブラッド」でセクシーな吸血鬼エリック・ノースマンを演じて人気に火が点いたことから企画が動きだし、監督のエガースや共同脚本を務めたアイスランドの詩人、ショーン(『LAMB/ラム』の脚本も担当)らと出会ったという。
かくして、念願のヴァイキングを演じることになったスカルスガルドの憑依ぶりは凄まじく、『ターザン~』でのバキバキの肉体美はそのままに(さらにパンプアップされた感も)、伸ばし放題の長髪と顔を覆う髭から覗く目には狂気をちらつかせ、194cmという体躯もあって威圧感がハンパない。ヴァイキングの戦士団がある村を襲撃する場面では、この姿のまま、文字通り獣のような暴れっぷりで魅せてくれる。襲撃前夜の儀式では、人間であることを捨てるために白目をむきながら咆哮。長回しで丁寧に彼の動きを追っていく襲撃シーンになると、まさにバーサーカー(狂戦士)といった感じで目の前に現れる敵を手斧や剣で本能のままに斬り倒し、倒れ込んだ相手の喉笛を食いちぎって遠吠えを上げるといった強烈な描写が次から次へと展開される。どちらかというと、同じスウェーデン出身のテニス選手、ビヨン・ボルグやステファン・エドバーグのような、“貴公子”という愛称がぴったりなスカルスガルドだったが、そのイメージをぶち壊す勢いで野性的なヴァイキングを全力で体現している。
父王を殺されたヴァイキングの王子の復讐劇
そんなスカルスガルドが演じているのは主人公のアムレート。子どもの頃、父である国王オーヴァンディル(イーサン・ホーク)を尊敬してやまないアムレートだったが、叔父フィヨルニル(クレス・バング)によって父が目の前で暗殺されてしまう。命からがら逃げ出すことに成功した彼は、父王の仇を討ち、叔父に奪われた王妃の母グートルン(ニコール・キッドマン)を救出することを心に誓う。時が経ち、屈強なヴァイキングの戦士に成長したアムレートは、襲撃したある村で預言者(ビョーク)に出会ったことから、己の運命と使命に向き合うことに。一度は王座に就いたフィヨルニルが別の王によって国を追われ、いまはアイスランドで羊飼いを生業にしていると知り、奴隷を装って叔父の懐に入り込もうとする。