最終話目前!「ガンニバル」に沼ったライター&編集部が語る推しポイント「日本で『こんなすごいことができる』と示した」

インタビュー

最終話目前!「ガンニバル」に沼ったライター&編集部が語る推しポイント「日本で『こんなすごいことができる』と示した」

「思わず、『ヒート』かよ!って(笑)」(SYO)

ハリウッド映画顔負けの大迫力の銃撃戦も描かれた第3話
ハリウッド映画顔負けの大迫力の銃撃戦も描かれた第3話[c]2022 Disney and its related entities

須永「印象に残っているシーンや演出はありますか?」

別所「作品のクオリティの高さを実感するという意味では、第1話冒頭のロングショットが印象的でした。半狂乱になった狩野が『お前ら人間喰ってんだろ!』って叫びながら後藤家に単身乗り込む場面です。緊迫感がすごくて、最初に抱いていた『この原作を本当に映像化できるんだろうか』という不安を消し去って、とんでもない作品が始まるんだという確信と期待感を抱かせてくれました。あと、第3話で、失踪した狩野の捜査を行う大悟が睦夫一派の襲撃に遭う現在と、彼が左遷させられ、娘のましろが言葉を発せなくなる原因となった過去の事件が同時進行で展開されるモンタージュもすごくよかったです」

SYO「すごかったですね!銃声や窓ガラスが割れる場面で、現在と過去がつながる。秀逸でした。第3話はとても映画的というか、警察車両で移動中の大悟の前にごみ収集車が現れて、後ろの扉が開いたと思ったらそこに睦夫がいて、いきなり銃撃してくるという…。思わず、『ヒート』かよ!って(笑)」

高橋「僕は第4話が印象に残っています。高杉真宙さん演じる寺山京介が大悟と初対面するのですが、彼は幼い頃に供花村で顔の半分が喰われているんですよね。喰われた部分を保護するマスクをゆっくりと外す場面もあって、生理的に画面から目を背けてしまいたくなる感覚でした。ちなみに、ドラマでは山奥の廃墟でガラス越しの対面になっていましたが、原作では崖と崖が向かい合っているような場所で、それぞれが立っているんですよね」

SYO「京介に大悟が近づけないようにしていたんですよね。ドラマでは、それが『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に登場する実験施設のフロアみたいになっていました」

大悟は謎の男、寺山京介に電話で呼び出される
大悟は謎の男、寺山京介に電話で呼び出される[c]2022 Disney and its related entities

別所「おもちゃとかも置いてありましたしね。そう考えると、いろいろな作品からのオマージュも随所にちりばめられているのかもしれないですね」

SYO「撮影監督が『さがす』『死刑にいたる病』などの池田直矢さんなのですが、柳楽さんは池田さんに、ジャン=ポール・ベルモンドの出演作のエッセンスを取り入れたいとお話しされていたようです。ベルモントと言えば、ルパン三世のモデルになったと言われるアクションスターで、大悟が躍動するシーンにはその要素も生きているんじゃないかな」

「慣習から離れられない怖さを感じました」(高橋)

須永「先ほど、SYOさんが親と子の関係について言及していましたが、ほかに心に響いたテーマはありますか?」

別所「かなり後半になってからですが、恵介が大悟に放った『誰かのために自分の手を汚せないやつがクズだ』という言葉は頭に残っています。これも“家族”についてだと思うのですが、大悟にも恵介にもそれぞれ守りたいものがあって、方法はどうあれ、それを突き詰めた結果、2人は対立してしまうのかな?と。出会うシチュエーションが違えば、仲のいい友だちになれた気もするんですよね…」

互いに守りたいものがあって対立する大悟と恵介
互いに守りたいものがあって対立する大悟と恵介[c]2022 Disney and its related entities

SYO「2人の比較で言うと、後藤家の当主である恵介はずっと自制していて、自分よりも家族を守ることを優先しています。家族を守るのは大悟も同じですが、彼が抱える暴力衝動が愛情に勝ってしまう瞬間があるんです。どっちがヒーローでどっちがヴィランかと言われたら、感覚的には大悟のほうがヴィラン的ですよね。だからこの作品では誰が正義で誰が悪という感じにはなっていかないというか」

須永「私も第6話のレビューを書いた際に言及したのですが、大悟は法律だったり倫理の正しさだったりを使って、自分が暴力を発揮する場所を見つけようとしている気がしました。そういう意味でも、恵介のほうが冷静ですよね」

SYO「演じる笠松将さんの“引き”の演技もすごく上手かったです。本当の想いをひた隠しにしているような、感情を抑えている葛藤が画面越しにも伝わってきました。原作だと、もっと荒々しいルックで、岩男にちょっと近いのですが、笠松さんが演じることでエレガントさやカリスマ性みたいなものを感じました」

“家族”のため、信念を突き通す恵介を見事演じる笠松将
“家族”のため、信念を突き通す恵介を見事演じる笠松将[c]2022 Disney and its related entities

高橋「僕は“血の呪い”というワードがすごく響きました。後藤家の面々が一堂に会して家族写真を撮るシーンが謎におぞましいというか、慣習から離れられない怖さを感じました。この作品みたいに極端でなくとも、僕たちの日常にだって近い部分があるよな…と考えながら観ていました」

須永「私はそういったしがらみを感じたことがないので、わりと距離を置いて楽しめたのですが、高橋さんはゾワゾワしたんですね」

高橋「はい。僕が地方出身で銀行員として勤めていた経験があるのも要因かもです(笑)。長いものに巻かれる感じというか、小さなコミュニティだと学閥の話にもなりがちですから」

「国内コンテンツで『こんなすごいことができるんだぞ!』というのを示せた」(SYO)

須永「最後に、これから観る方へ最終話第7話の見どころポイントをお話いただければと思います。第6話までの時点で、供花村の“人喰い”にまつわる真相が徐々に明らかになってきました」


激化する大悟と後藤家、村人たちとの対立の行方はいったい…?
激化する大悟と後藤家、村人たちとの対立の行方はいったい…?[c]2022 Disney and its related entities

別所「岩男が言っていた“後藤家の汚点”がなにか、というところですね。『15年前の裏切り者』といった言葉を発していて、それを含めて、これまでにちりばめられてきた様々な謎がどのように回収されるかに注目です」

高橋「僕は先が気になって原作を読んでしまったのですが、衝撃の展開の連続で、ドラマを観るまで我慢しておけばよかったかな?とちょっと後悔しています(笑)」

SYO「ストーリーの展開や表現のどこに注目してみても、国内コンテンツで『こんなすごいことができるんだぞ!』というのを示せたことができたのではないでしょうか。海外の反応はまだチェックできていないので、特にアジア圏で日本の“村モノ”がどのように受け止められるのかも気になります。その評価次第で日本のエンタメが変わっていく試金石になっていくのかな?と考えると、さらにおもしろいですよね」

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文/サンクレイオ翼

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