“世界のクロサワ”はなにがすごかった?アカデミー賞と黒澤明、『生きる LIVING』への70年にわたる関係

コラム

“世界のクロサワ”はなにがすごかった?アカデミー賞と黒澤明、『生きる LIVING』への70年にわたる関係

「スター・ウォーズ」にも!いまなお世界に影響を与える名作たち

ルーカスが「スター・ウォーズ」の1作目、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)を作る際に、黒澤の『隠し砦の三悪人』をヒントにしたのは特に有名な話だろう。あのR2-D2とC-3POのコンビや、ヒロインであるレイア・オーガナのキャラ設定など、『隠し砦』からの影響は濃厚だ。戦国時代を舞台に、侍の主人公が姫と共に次から次へと窮地を乗り越えるこの冒険アクションは、いまも究極のエンタメとして色褪せない。

戦に敗れた国の侍が、2人の百姓と共に世継ぎの姫を敵兵から逃がそうとする『隠し砦の三悪人』
戦に敗れた国の侍が、2人の百姓と共に世継ぎの姫を敵兵から逃がそうとする『隠し砦の三悪人』[c]Everett Collection/AFLO

『羅生門』は、一つの事件を、関係した複数の人物の証言に分けて描くスタイルが革新的で、クエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』(91)、ブライアン・シンガーの『ユージュアル・サスペクツ』(95)、そしてリドリー・スコットの『最後の決闘裁判』(21)など名監督の作品にインスピレーションを与えた。誘拐事件を描いた1963年の『天国と地獄』は、モノクロ作品に1か所だけカラーを使う手法がスピルバーグの『シンドラーのリスト』(93)でオマージュされるなど、黒澤作品から名作への影響は数え切れないほど発見できる。


 芥川龍之介の短編小説をベースに、ある武士の殺害事件をそれぞれが食い違う関係者たちの証言を映像化した『羅生門』
芥川龍之介の短編小説をベースに、ある武士の殺害事件をそれぞれが食い違う関係者たちの証言を映像化した『羅生門』[c] 1950 KADOKAWA

なかでも『七人の侍』は黒澤作品の最高峰に挙げる声が高く、野武士から村を守るために雇われた侍たちの戦いは、物語およびアクション場面の演出が、その後の監督たちに“映画の教科書”のように扱われている。『七人の侍』は、1960年にハリウッドで西部劇『荒野の七人』としてリメイクされた。海外でのリメイクといえば、1961年の時代劇『用心棒』が、クリント・イーストウッドの出世作『荒野の用心棒』(64)でマカロニウエスタンに、そしてブルース・ウィリス主演の『ラストマン・スタンディング』(96)でギャング映画に、とジャンルを変えて再生されている。

野武士の集団に搾取される農民に雇われた7人の侍が、身分差を越えて村を守ろうとする『七人の侍』
野武士の集団に搾取される農民に雇われた7人の侍が、身分差を越えて村を守ろうとする『七人の侍』[c]Everett Collection/AFLO

ただし、黒澤の作品はそれぞれの完成度があまりに高いため、あえてリメイクを作ることはリスクも伴う。どうしてもオリジナル版と比べられてしまうからだ。あえてその高いハードルに挑んだのが、オリジナルの発表から70年の時を経て製作された『生きる LIVING』(3月31日公開)だ。


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