“PG12”の『シン・仮面ライダー』は、子どもが観ても大丈夫?「鬼滅」や「東リベ」にも共通する疑問を解説

コラム

“PG12”の『シン・仮面ライダー』は、子どもが観ても大丈夫?「鬼滅」や「東リベ」にも共通する疑問を解説

石ノ森章太郎が生みだした“原点”へリスペクトを捧げ、庵野秀明が脚本、監督を務めた『シン・仮面ライダー』(公開中)。本郷猛/仮面ライダー役を池松壮亮が演じ、緑川ルリ子役を浜辺美波が、一文字隼人/仮面ライダー第2号役を柄本佑が演じた本作は、公開から約1か月が過ぎた4月23日に興行収入20億円を突破。歴代「仮面ライダー」映画の興収新記録を樹立し、映画興行の大きな書き入れ時であるゴールデンウイークに突入している。


望まぬ力を背負わされながら、“人”であろうとする本郷の苦悩が描かれる
望まぬ力を背負わされながら、“人”であろうとする本郷の苦悩が描かれる[c] 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

この大型連休に家族連れや、友人同士で本作の鑑賞を計画している方もいらっしゃると思うが、本稿では未見の方から多く聞かれる、「シリーズに詳しくなくても大丈夫なのか」「“PG12”は子どもに観せても大丈夫なのか」という疑問点について解説しながら、本作の魅力に改めて迫ってみたい。

ゴジラ、ウルトラマン…コンテンツのファン以外も魅了する「シン・」の魅力

SHOCKERの手によって高い殺傷能力を持つオーグメントと化した本郷猛(池松)が、組織から生まれるも反旗を翻した緑川ルリ子(浜辺)の導きで脱走。迫りくる刺客たちとの壮絶な戦いに巻き込まれていく本作。序盤からクライマックスまで息付く暇もない怒涛のアクションシーンの連続に、西野七瀬本郷奏多長澤まさみ松坂桃李竹野内豊斎藤工、そして森山未來といった日本を代表する俳優たちの登場も見どころの一つ。

興収82.5億円を記録し、第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど社会現象を巻き起こした『シン・ゴジラ』(16)。『エヴァンゲリオン』シリーズの完結編となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)、庵野自身もファンであることを公言している日本を代表するキャラクターを新たに映画化した『シン・ウルトラマン』(22) 。そして今回の『シン・仮面ライダー』と、庵野監督が携わり「シン・」と冠された作品はこれが4作目となる。

『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』としてコラボプロジェクトも展開されているこの4作品は、いずれも各コンテンツ本来のコンセプトにまで遡り、その核となる部分の魅力を活かす斬新な表現で従来のコンテンツイメージを大きく刷新。大人から子どもまでが楽しめる大作エンタテインメントとして、作品の発表ごとに話題を集めてきた。

現代日本を舞台に、初めてウルトラマンが降着した世界を描いた『シン・ウルトラマン』が昨年公開され、1966年に放送開始された初代「ウルトラマン」の企画、発想の原点に立ち還って「空想と浪漫。 そして、友情。」というテーマを掲げ、これまでウルトラマンに触れてこなかった観客にまで波及するヒットとなったことは記憶に新しい。

そうした「シン・」のスピリットは、本作にも色濃くあらわれている。石ノ森による原作漫画と、1971年に放送され子どもたちを熱狂させた「仮面ライダー」に準拠した世界観のなかで、“原点”の精神性に立ち返り、正義とはなにか、悪とはなにかという疑問符を投げかけながら、自身のアイデンティティに向き合うという普遍的なドラマが展開。

これによって、現在進行形で「仮面ライダー」シリーズに熱狂している子どもたちや、かつて熱狂した大人たちだけでなく、「仮面ライダー」初体験となる人にとっても深く響く、『シン・仮面ライダー』という新たな物語が誕生したのだ。

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