ハンフリー・ボガート、ロバート・ミッチャム、リーアム・ニーソン…探偵フィリップ・マーロウを演じてきた名優列伝
盟友ニール・ジョーダン監督とリーアム・ニーソンの4度目のコラボ
こうした改変は、監督と脚本を手掛けたニール・ジョーダンによるものだろう。リーアムと同じアイルランド出身で、『プランケット城への招待状』(88)、『マイケル・コリンズ』(96) 、『プルートで朝食を』(05) に続いて4度目のタッグを組む彼はリーアムの魅力を理解しつくしており、最大限に映える経歴をマーロウに加えたのだ。それは、アイルランド系のルーツを持ち、第一次世界大戦では兵士として活躍し(ほかの俳優が演じたマーロウと異なり喧嘩が異様に強いのはそのため)、戦後に就職した石油会社はアルコール中毒でクビに、その後検事になったがそれにも馴染めず、探偵事務所を開業したというもの。なお石油会社をクビになった体験はチャンドラーのもので、著者にもリスペクトを払った設定変更だったりする。
共演陣もリーアムとは旧知の俳優が参加している。ファム・ファタールのクレアを演じたクルーガーとは『アンノウン』(11)、ドロシー役のジェシカ・ラングとは『ロブ・ロイ ロマンに生きた男』(95) で共演済み。ジョー役のイアン・ハートとは『マイケル・コリンズ』『プルートで朝食を』、フロイド役のダニー・ヒューストンとは『タイタンの戦い』(10)と『タイタンの逆襲』 (12)で共演した仲である。
そんな気心が知れた仲間に囲まれているからか、本作のリーアムはマーロウ役を演じるプレッシャーをものともしないナチュラルさだ。修行僧のようなストイックな生活を送り、女性に紳士的に接するマーロウなんておそらく初めてではないだろうか。
だが本作のマーロウ像も将来、別の俳優によって更新されるに違いない。スーパーマンやバットマンと同じくフィリップ・マーロウもまた、時代ごとにテキストを読み替えられることで永遠の生命を保ち続けるアメリカン・ポップカルチャーの神々の一人なのだから。
文/長谷川町蔵
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6月19日(月)から配信開始
■『ロング・グッドバイ』
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■『大いなる眠り』
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