上野樹里、7年ぶり主演作で林遣都と初共演『隣人X 疑惑の彼女』公開決定!
<キャスト、スタッフコメント>
●上野樹里(柏木良子役)
「近年コロナ禍でマスクで顔が見えなかったり、ワクチン打った打たないで人間関係がギクシャクしたり。SNSが発達して通信速度が速くなった分、素顔が見えないなんてこともある現代。だからこそ時代の流れにのまれず自分らしく生きることや、自分らしさを理解してくれる人と出会えることの大切さを伝えられる作品だと思い出演を決めました。緻密に練られている脚本で、同じ人物でも疑惑の目で見るのと、そうでないのとで見え方が変わってきて、おもしろそうだなと思いました。人を見る時ってきっと、情報社会のなかで、自分がなんらかの『フィルター』という名の事前の情報をよかれと思って入れて見ていると思うんです。簡単に対象となるものの印象って、変わってしまうと思うんです。フェイクニュースも多いなか、皆さんにもその当たり前の怖さ、虚しさを感じてほしいと思いました。私の演じた良子は、国立大学を出ていて、少し英語も話せて。でも会社を辞めて、なぜか宝くじとコンビニのバイトを掛け持つ暮らしぶり。休みの日には節約のためにお弁当の作り置きを用意したり図書館で借りた本を読むというアナログな中年女性です。地味で冴えない生活ではありますが、良子は至って満ち足りているような…。笹と出会ってからどうなっていくのか、乞うご期待!笑 演じた私も林遣都くんも、役や世界観にぴったりだと思います。なんの違和感もなく自然に撮影が進んでいきました。遣都くんの役どころが結構複雑なので、大変だったとは思いますがその分見応えのあるお芝居が撮影できたと思います。ちょっとハラハラドキドキしたい、Xってなに?誰がXなの?と刺激を求める方にも、しっとりとしたラブストーリーを観たい方にも、楽しんでいただけると思います。いま届けるべきメッセージが詰まっている映画なので、ぜひたくさんの人に見てもらえたらうれしいです」
●林遣都(笹憲太郎役)
「今回僕が演じた笹は、いまの厳しい世の中に翻弄されながら常になにかとなにかのはざまで苦しんでいる、そんな精神的にしんどい役どころでした。僕自身も撮影中追い込まれる瞬間や苦しい場面がたくさんあったのですが、共演者の方やスタッフの方々に支えられなんとか演り抜くことができました。共演させていただいた上野樹里さんは、撮影期間中一切の妥協をせず、誰よりも作品に愛情と情熱を注ぎ込む、頼もしくすてきな女優さんでした。作品に向き合うなかで樹里さんから学ぶことがたくさんあり、ご一緒できて本当にうれしかったです。そして、今回は映画『ダイブ!!』以来15年ぶりとなる熊澤組でした。お芝居を始めたての頃に熊澤監督からいただいた言葉や厳しい演出はいまも鮮明に覚えていて、少しでも成長した姿を熊澤さんの作品でお見せしたいなという思いがあり、精一杯演じさせていただきました。『隣人X』という未知なるタイトルですが、描かれているのは現代社会を生きる『人』です。他人を傷つけないための想像力、多くを求めず身近に存在する小さな幸せに気づけた瞬間の喜び。この映画に込められた願いをたくさんの人に感じていただきたいです。是非劇場にお越しください」
●熊澤尚人(監督、脚本、編集)
「初めて原作を拝読した時、誰にも迷惑をかけず懸命に日常を生きる女性たちを通じ、隣にいる他人の不可解さ、異物感、排除と拒絶がリアリティを持って描かれ、いまの社会を生きる我々の心に強く響いてくる大変優れた小説だと思いました。原作者のパリュスさんから、熊澤監督の『隣人X』を作ってほしいと言っていただけました。主人公の良子のイメージは初期から上野樹里さんでした。所属事務所に出演オファーをしたあと、ご本人から直接携帯に電話をいただき、熱を持った長い感想をお話しいただきました。後日会った際も8時間ぐらい話し合い、上野さんからのアイデアも脚本にどんどん取り入れていきました。上野さんの演技は、瞬間に生まれるダイナミズムと予想を超える感じが大変魅力的で、唯一無二な女優さんです。しっかりとした自分の考えを持ちながらも、柔和で日常のささやかなことに幸せを見いだして生きている女性の心情を、リアルで繊細に演じてもらえたと思います。林さんは、悩み苦しみながらも前に進もうとする男の苛立ちや不安、人間の弱さを見事に演じ切ってくれました。演技に向かうタフさと誠実さは怪物ですね。高校1年当時を知っている分、いまは本当に俳優を天職にされていると感じました。本作は私たちのなかにある無意識、無自覚の偏見の話です。世界で分断が進み、コロナで拍車がかかったいまだからこそ、自分のなかについ生まれてしまう見えない偏見を自覚して、向き合う努力をしていかないとなりません。『Xは誰か?』と思った瞬間に、私たちの心には偏見の芽が生まれます。この偏見の芽とあなたならどう向き合うか?この映画を観て考えてみていただければうれしいです」
●パリュスあや子(原作)
「映画化と最初に聞いた時は、本当に!?と信じがたい気持ちでした。監督やスタッフが『この作品を映画化するんだ!』と強い情熱を持って臨んでくれたのがわかって、その想いがなによりもうれしかったです。結婚してフランスに移住し、自分が『移民』となってみて初めて知った感情や経験がありました。いままでどこか遠くの国の出来事のように感じていた『移民、難民』問題が我が身のこととなり、日本でもこの問題を誰もが身近に感じるシチュエーションがありえるだろうかと考えていた時『地球全体で宇宙人を難民として受け入れることになったら?』というアイデアが突然閃きました。他人を100%理解する、というのは不可能なことだと思います。特に育ってきた境遇や考え方の違う人のことは『理解できない』で片付けてしまいがちなのではないでしょうか。たとえ理解できなくても、自分とは異なっていても『その人の立場に立って気持ちを想像する』ことから人の歩み寄りは始まると思っています。映画はまさに新たな視点で『異なる者たちの恋愛』を軸に、人とのつながりや社会の偏見を問う作品になっていて、一観客として最後まで楽しく、時に涙しながら拝見しました。なにより俳優陣が素晴らしく、美しく説得力のある映像と共に無理なく世界観がミックスされていて自然と引き込まれました。究極の恋愛映画なのか、日常と地続きのSFなのか…まずは頭を空っぽにして、心の感じるままにこのちょっぴり不思議でリアルな映画の世界を生きてみてください。観終わった後、いままで気にならなかったことが気になってくる。そんな映画だと思います。映画と原作の相違点も、読み比べて探してもらえたらうれしいです!」
文/スズキヒロシ