「激推しせざるを得ない」『BAD LANDS バッド・ランズ』の中毒性とは?金メダリストや漫画家まで、著名人の声で解説!
「命を持った登場人物たちの決死の生き様」を山田涼介らが体現!
山田演じるジョーのキャラクターも強烈。無邪気に姉を慕う一方で、刑務所から出所したばかりで野心あふれる目をギラギラさせている。その狂気がいつ、どのような形で暴走するかわからない危険性を帯びており、観る者に不安とスリルを与えている。山田の新境地とも言えるジョーについては、映画ジャーナリストの金原由佳は「山田涼介の放つ真意の見えない微笑みと怖さ知らずの凶暴性。これ以上下がりようもない地獄から天上の楽園への出口を、この2人(ネリとジョー)と探し、絶望し、もだえ、騙し騙される愉楽。這い上がれ!」と語っており、社会の底辺でなりふり構わずあがく姿から目が離せなかったようだ。
ネリとジョー以外にも、犯罪組織をまとめるネリの上司的存在の高城(生瀬)に、組織の検挙に躍起になっている大阪府警の佐竹刑事(吉原)、西成のアパートに暮らす老人だが、ただ者じゃない雰囲気を漂わす曼荼羅(宇崎)、ジョーが金を稼ごうとする賭場所を仕切る謎の女性、林田(サリngROCK)と個性的なキャラクターが次々と登場する。これらの登場人物たちが織りなす、緊張感と笑いがないまぜになった独特の世界観はきっとクセになるはず。人喰いツイッタラーの人間食べ食べカエルも「変に美化することもなく、綺麗事も吐かず、全員がそれぞれのクソ野郎を全うする。命を持った登場人物たちの決死の生き様がこの映画には詰まっている」というコメントを残している。
「スピーディーな展開に夢中になりながらも、なにかが心に引っかかる」複雑なテーマ性
直木賞作家、黒川博行による原作小説では、緻密な取材によってあぶりだした社会の暗部がリアリティを込めて描かれており、そのディテールは映画版にも受け継がれている。闇社会を生きる人間ドラマに家族愛、どん底から希望を見出そうとする人間賛歌という一面も持ったストーリーの秀逸さに感銘を受け、力をもらったという感想も数多く見受けられる。
「痺れました!血と汗と土埃の匂いが充満するスクリーン。全シーンが格好良いハードなクライムサスペンス!激推しせざるを得ない!」と熱いコメントを送っているのは映画プレゼンターの赤ペン瀧川。そして、「人間誰しも『いまに見てろ』と歯をくいしばる苦しみを持っている。あの日あのときと決別しようと駆けだすときを待っている。チャンスをつかめ。逆転劇を起こすんだ。夢に向かって走れ」という言葉を綴るエッセイストの松浦弥太郎もまた、作品からエールを受け取った一人。柔道家の阿部詩もネリやジョーらの絆を前に、「血はつながっていなくてもそこに愛は存在するんだと、見ていて心が動かされましたし、自分の人生を生きるということは、こういうことなんだと感じました」と続く。
一方で、フリーアナウンサーの宇賀なつみの「はたして、正義とはなんなのだろうか?本当の悪人など、この世界に存在するのだろうか?私にはまだわからない。ただ、信じたい。どんな人間にも、誰かを愛する心はあるのだと」、モデルの前田エマの「スピーディーな展開に夢中になりながらも、なにかが心に引っかかって、すっきりしない。ひん曲がった、それでいて素直な、“愛”と呼ぶのも納得がいかないような結末を作り上げたのは、この社会なのか」といった意見も。観る者に“犯罪とはなにか”“正義の在り方とは”という社会的なメッセージに加え、枠にとらわれない“家族”や“愛”の形といったテーマも投げかけており、本作における一筋縄ではいかない複雑さも物語っている。
ネリとジョーに待ち受ける結末を希望と見るか、絶望と捉えるか…。エンタメ作品としてのおもしろさは失わず、観終わったあとに、心の中に容易には消化できないしこりを残していく『BAD LANDS バッド・ランズ』。本作ならではの鑑賞後感を何度も噛みしめてほしい。