第96回アカデミー賞のスタイルを“In&Out”で判定!パーフェクトなルックを披露したセレブは誰?

コラム

第96回アカデミー賞のスタイルを“In&Out”で判定!パーフェクトなルックを披露したセレブは誰?

IN:エレガントにルールを破る /OUT:エレガントなルールを破る

今冬に終わったばかりのメンズのファッションウィークであきらかになったのは、クラシックで洗練されたスタイルが流行するということ。ウィメンズと同じく、古きよきファッションがINなのだが、やはり現代だからこそのエッセンスを意識しないと、ジェントルマンの称号は手に入らない。今回のレッドカーペットで、モダンな紳士のスタイルを披露できたセレブたちは、実は巧妙なルールブレイカーだった?

 コールマン・ドミンゴ
コールマン・ドミンゴMike Baker / [c]A.M.P.A.S.

Netflix製作『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』で主演男優賞にノミネートされたコールマン・ドミンゴは、ブラックタイというドレスコード内で、アクセサリーをうまく使った冒険的コーディネートが実に巧く、ボタンに特徴のあるカスタムのルイ・ヴィトンに合わせたカウボーイブーツもスタイリッシュ。リボンブローチなのか、ボウタイにブローチをつけたのか、いずれにしても優雅。タイをこのように彩るアイデアは、IN。

 キリアン・マーフィー
キリアン・マーフィーMichael Baker / [c]A.M.P.A.S.

物理学者で原爆の父として知られるJ・ロバート・オッペンハイマーの半生をしなやかに演じ、初オスカーノミネートで、見事に主演男優賞を受賞したキリアン・マーフィー。タキシードは、クラシックなヴェルサーチェ。90年代のヴィンテージピースを基に、カスタムしたそうだ。合わせたアクセサリーは、オメガの「デ・ヴィル」ウォッチと、ここでもブローチが。香港発のブランド、Sauvereignで特注したものだそう。『オッペンハイマー』での受賞は、“世界の平和のために従事する人に捧げる”と受賞スピーチでふれたように、何においてもディテールに心を配る姿勢はIN。どのアイテムも、最も派手なデザインを避けて選んだところに、はずしのテクニックの気品と巧みさを感じる。

 キー・ホイ・クァン
キー・ホイ・クァンTrae Patton [c]A.M.P.A.S.

2009年以来の5人で発表する体制が復活したとはいえ、昨年の受賞者がプレゼンターとして参加するのが習わしのオスカーだから、キー・ホイ・クァンももちろん出席。タキシードはジョルジオ・アルマーニで、ラペルにはブローチをあしらった。クァンのインスタグラムによると、ジュエリーはカルティエとのこと。今回は違うことで話題の中心になったクァンだけど、振る舞いもファッションもプレイフルなのはIN!

 シム・リウとアリソン・スー
シム・リウとアリソン・スーMark Von Holden / [c]A.M.P.A.S.

『バービー』のケンたちが披露した、近年で最も盛り上がったとの呼び声が高い「I’m Just Ken」のパフォーマンスにも参加したシム・リウ。オスカーのドレスコードがブラックタイであることはよく知られているが、ボウタイやタイをしないどころか、シャツまでナシでレッドカーペット入りした。それでも、各メディアでベストドレスに選ばれていたのは、フェンディのダブルブレストからユニークなシェイプを選んだこと、セットアップのデザインがタイトでなくてルースであること(特にボトムスのラインがとても優美)、特徴のある重ねのパートをジュエリーで飾ったこと。「想像上の自然」と名付けられたダイヤモンドとプラチナのジュエリーで、デビアスのものだそう。ウォッチは「世界はあなたのもの」という遊びのあるジェイコブス・アンド・コーをチョイス。メンズのファッションルールも、エレガントにやぶられるのであれば、粋にみえる好例。

 トム・クック
トム・クックMike Baker / [c]A.M.P.A.S.

意外にも(?)、とてもおしゃれだったのが、アップル社のCEO、トム・クック。オスカー参加の理由は、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』がアップルTV製作だから。服を選ぶ時間がもったいないとファッションに関心がないことを公言していた前CEOと違うことが一目瞭然なのが、タキシードのフィッティングがパーフェクトだから。この日のためにどこかのブランドから借りたりしているのではなくて、テイラードで自分サイズに仕立てていることがわかる。メンズ、特にタキシードはフィッティングが命。「品を出せるか」はショルダー、胸板、袖などバランスに大きく左右されるからだ。さすが普段、1ミクロンの差にこだわって、美しいデザインを世へ送り出している人なだけある!ラペルに付けたピンも、スポーティーで未来的なナイキのアイウェアもファッショナブルだし、メガネのフレームにいたっては、リリー・グラッドストーンのドレスのブルーに合わせていたとしたら、テクニシャン過ぎて卒倒しちゃうかも。よい裏切りの着こなしは、もっとちょうだい!なIN!


 ニコラス・ケイジ
ニコラス・ケイジTrae Patton / [c]A.M.P.A.S.

一方、残念だったのは、ニコラス・ケイジ。ブラックタイのドレスコードをきっちり守り、王道のタキシードを選ぶのは大賛成なのだが、ジャケットは、男性らしい肉体の美しさを魅せるように吸い付いているようなサイズ感が望ましいし、ボトムスの裾もだぶついている。ドレスコードが存在する意味はそれが最もエレガントだから。奇をてらってルールを破らなくてもいいけれど、エレガンスのルールを守らないのはもっとOUT!

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