「下町ロケット」など池井戸作品で存在感を放つ落語家・立川談春が“中年男の哀愁”を体現!
俳優で演出家の宅間孝行が、かつて主宰していた劇団「東京セレソンデラックス」や、新たなユニット「タクフェス」でも人気の演目を、自ら監督を務めて映画化した『あいあい傘』(10月26日公開)。親子の再会をテーマにした本作で、落語家の立川談春がベテランならではの味わい深い演技を見せている。
25年前に突然姿を消した父親を捜し、小さな田舎町を訪れたヒロインさつき(倉科カナ)を中心に、そこで出会った人々との物語が描かれる本作。立川談春演じる彼女の父親・六郎は、その町にある恋園神社のお茶屋の女将・玉枝(原田知世)と新しい家族を築き、東雲という姓で学習塾を営んでいた。
さつきは、取材と嘘をついて、露天商の清太郎(市原隼人)から父や町に暮らす人々のことを聞き出し、なぜ父が家族の元から姿を消したのかも明らかにしていく。玉枝やその娘・麻衣子(入山杏奈)のことを大事に思いながらも籍を入れずにいること、毎日欠かさずに恋園神社と、なぜか東の方角に向かって手を合わせていること、東雲という姓を名乗っていることなど、複雑な思いを抱えながらその町で暮らす男を哀愁たっぷりに演じてみせる。
立川の本業はもちろん落語だが、俳優として14年放送の「ルーズヴェルト・ゲーム」や現在放送中の「下町ロケット」にも出演。「下町ロケット」では佃製作所社長・佃航平(阿部寛)を支える経理部長・殿村直弘を演じている。また、2作と同じく池井戸潤原作の『七つの会議』(2019年2月1日公開)にも出演するなど、もはや池井戸作品に欠かせない俳優となりつつある。
「『下町ロケット』で殿村がひとりで居酒屋で酒を飲むシーンを見て、六郎が見えた」と語るプロデューサーのオファーに、「落語家が映画やドラマで芝居をするのはどうか…」と悩みつつも実現したという今回の出演。本作を見れば、“俳優”立川談春の新たな魅力に気づくはずだ。
文/トライワークス