第91回アカデミー賞ノミネート直前予想! 注目は『ROMA/ローマ』作品賞奪取、『ボヘミアン』の追い上げ&『アリー』の巻き返し
『ROMA/ローマ』は最大10部門ノミネートの可能性あり?
『ROMA/ローマ』は作品賞や監督賞だけでなく音響賞や美術賞なども合わせると、最大10部門ノミネートの可能性がある。今年の目玉作品であることは間違いなく、Netflixは過去のオスカーキャンペーン最高レベルである2000万ドル(約22億円)をつぎ込んでいるとの報道がある。確かにハリウッド周辺のビルボード広告は『ROMA/ローマ』で埋め尽くされ、テレビCMもふんだんに流れている。Netflixとしては、配信事業者初の作品賞受賞を見据え、「やれることはすべてやる!」心意気なのだろう。また、Netflixは『ROMA/ローマ』の主人公クレオのような家事補助を生業とする女性たち(多くは有色人種で移民の女性たち)の賃金と権利を守るキャンペーンサイトを立ち上げている。アカデミー賞と政治経済環境はすでに切っても切り離せない関係となっていて、“ダイバーシティ(多様性)”“インクルージョン(包容性)”はオスカーキャンペーンの重要なフックとなる。
制作側の賞では、『女王陛下のお気に入り』の衣装デザイン賞、撮影賞の『ROMA/ローマ』、そして『アリー/ スター誕生』の主題歌賞は問題なくノミネートされ、受賞まで勝ち進みそう。『アリー/ スター誕生』はゴールデングローブ賞で最有力と言われていた主演女優賞や作品賞を落とし、1か月でどこまで巻き返しを図ることができただろうか。一方の『ボヘミアン・ラプソディ』は監督賞のノミネートは絶対にないものの、ヘア&メイクアップ賞や音響編集賞などでのノミネーションを目指す。
『万引き家族』『未来のミライ』のノミネートにも期待
『万引き家族』(18)が外国語映画賞ノミネートとなるのは確実。同じカテゴリーには強敵『ROMA/ローマ』がいるが、Netflixは作品賞へと矛先をシフトしているため、ロビイング次第では受賞の可能性も残る。また、韓国代表の『バーニング 劇場版』(2月1日公開)は村上春樹の短編小説が原作であり、製作にはNHKが名を連ねており、ある意味日本勢と呼べる作品だ。長編アニメーション賞には、ゴールデングローブ賞にもノミネートされた『未来のミライ』(18)が候補入りを目指す。今年の長編アニメーション賞は、『インクレディブル・ファミリー』(18)、『シュガー・ラッシュ:オンライン』(18)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(3月8日公開)、そして、日本の犬を主人公にした物語『犬ヶ島』(18)がノミネーションの指定席を獲得していると言われている。残る1席に座るのは『未来のミライ』か、アードマンの『アーリーマン〜ダグと仲間のキックオフ!〜』(18)か、『Tito and the Birds(原題)』か…。
今年は、「アカデミー賞最有力!」と誰もが思うトップランナー作品がなく、どの作品にもチャンスがある。アカデミー賞授賞式の司会に1度決まったケヴィン・ハートが過去のツイート問題で降板し、30年ぶりに司会なしで開催する方向だ。噂ではセレブリティが持ち回りで司会をするらしいが、司会の適任者もいなければ、作品賞の最有力もないのが第91回アカデミー賞の特徴と言えるのかもしれない。
文/平井伊都子