尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

コラム

尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

“映像の魔術師”大林宣彦監督が、20年ぶりに故郷である尾道を舞台に撮影し、病身を押して完成させた遺作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』がついに公開され、連日満員の盛況となっている。
これまでの大林映画を彷彿させるシーンで溢れた本作に込められた想いを探るため、記者はカメラマンと共に広島県尾道市を訪れ、大林映画ゆかりの場所や人々に取材を行った。

不動岩展望台から見下ろした、尾道水道
不動岩展望台から見下ろした、尾道水道

オープニング上映と舞台挨拶が決まっていた第4回尾道映画祭が中止となり、監督本人も望んでいた尾道市への凱旋が叶わないまま、『海辺の映画館』の公開予定日であった4月10日の午後7時23分、大林監督は82歳でこの世を去った。
本稿の取材は監督生前のものであり、お話を伺った方々の想いを尊重する意味でも、取材当時の言葉をありのままお届けする。

『転校生』との出会い

記者らの案内役を務めてくださった、大谷治さん
記者らの案内役を務めてくださった、大谷治さん

「僕がこの店を開店したのが1977年なので、大林さんが『HOUSE ハウス』で監督デビューされたのと同じ年ですね。いわば同級生です」と語るのは、喫茶店「茶房こもん」のオーナー、大谷治さん(68)だ。

洗練された盛り付けのワッフルと、尾道産の新鮮なレモンを使ったレモンスカッシュが人気の「茶房こもん」には県外からも観光客が絶えず訪れているが、実はここ、大林映画に幾度となく登場したファンの“聖地”としても知られている。
大谷さんは、『転校生』から『海辺の映画館』まで、尾道以外の土地を舞台にした作品においても制作部や現地コーディネーターとして大林組を支えてきた。

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「『転校生』の撮影が1981年(※編集部注:公開は翌1982年)なんですが、大林監督は当時、この店でよく打ち合わせをされていました。そのご縁で撮影に使わせてほしいということになったんです。
撮影に協力されていた地元の人もみんな監督の友達で、いまでいうフィルムコミッションみたいなものかな。同級生同士でやられていたんですけど、そのなかで僕は一回り離れていたので、使いっぱしりとして先輩方に習いながら…習いながらって言っても全員が素人なんですけどね(笑)、そうやって始めたのが最初です」と、きっかけとなった『転校生』当時のことを振り返る。

写真/黒羽 政士



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