尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年 - 3ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

コラム

尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

大林組のものづくり

『転校生』のロケ地となった御袖天満宮
『転校生』のロケ地となった御袖天満宮

「実は、大林監督よりも先に薩谷さんと知り合いになったんですよ。美術監督はロケハンなどで事前にロケ地にいらっしゃるじゃないですか、それで薩谷さんに手伝ってほしいって言われて、『転校生』にボランティアで携わることになりました。当時は美術監督が装飾までやられていたので、アレがあるかコレがあるかと、いまみたいにネットがないので全部電話で『ところで大谷ちゃん、こういうのある?』と、それこそ借り物競走(笑)。最初は脚本なんかもらえなかったから、薩谷さんから『くたびれた座布団が要るんだ!』とか言われても、どんな映画ができるんだろう?と思っていました。
映画ってそうやって作るんだと思っていたんですが、しばらく経ってから普通の映画では小道具屋さんにお願いして、一括で東京からトラックで運んでくるんだと知って驚きましたね。
土地土地によって装飾品が違うからこそ“地方”に意味があるのだということを、監督も非常に重んじていました。街並みに関しても、朽ちれば朽ち、新しいものが出来れば出来、その変化も含めて撮影していく。人の営みのなかで映画をこしらえていくのだという監督の哲学が、映画の細部にも表れています」。

立派な石段は55段にもなる
立派な石段は55段にもなる

そうして地域の協力を得て制作された『転校生』は、1982年に公開されると、主演の小林聡美や尾美としのりと同世代の10代20代を中心に口コミで徐々に評判が広まっていき、やがて青春のバイブルと言われるほどの支持を得た。これにより、大林監督は『時をかける少女』(83)、『さびしんぼう』(85)と連なる「尾道三部作」をはじめ、尾道を舞台に立て続けに映画を撮っていくこととなる。

「次々に撮影予定が入ってくるんです。撮影が終わって、やれやれ東京に帰ったと思っても、『いやぁ~ね、大谷ちゃん』と薩谷さんから電話が来るんです。薩谷さんが“ちゃん呼び”する際は、決まってお願いごと(笑)。『この間撮りそこねたアソコあったじゃん、連れてってよ』って…。何度も現場をこなしているうちに素人でもやがて覚えちゃいますよね。そうやって次第に映画の作り方を勉強していった感じですね。大林監督は制作部に多くを任せてくださるので、非常にやりがいがあります」。

大林映画の一般人気を加速させた『時をかける少女』
大林映画の一般人気を加速させた『時をかける少女』
写真/黒羽 政士



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