尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

コラム

尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

尾道は、大林映画そのものだ。

大林映画と尾道の40年を振り返る
大林映画と尾道の40年を振り返る[c]2020「海辺の映画館—キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

取材を終え「茶房こもん」に戻った我々は、大谷さんに“聖地巡礼”の魅力について尋ねた。

「大林監督が作品でなにを語ろうとしていたんだろう、ということを尾道の街を通して、それぞれに感じていただけるのではないでしょうか。例えば、お寺の街、海辺の街ならではの監督の死生観であったりとか。
監督の作品ではしばしば、死んだはずの人間が帰ってきたりしますよね。『時をかける少女』の深町君も、ひょっとしたらおばけかもしれない。ある意味で魂は死なない、未来にも自分たちの気持ちは生き続けるんだというメッセージが込められている。このテーマは『海辺の映画館』にもつながっていますが、そういった考え方が、尾道にいると非常に自然なことに感じられるんです」。

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大谷さんと尾道中を歩き回った記者らも、記憶に残る大林映画の名シーンを反すうしながら、不思議とこの感覚を共有していた。
大林監督は撮影場所に記念碑を残したり、セットを保存したりといったオファーをすべて断ってきたというが、尾道の街を実際に歩いてみると、時代とともに変わっていった景色、変わらなかったノスタルジックな景色が入り交じることによって独特の情緒が醸されており、大林監督がその時代ごとに、ありのままの尾道の姿を映画に刻もうとしてきた理由が実感できたように思えたからだ。

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[c]2020「海辺の映画館—キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

「監督にとって尾道は、過去の人から受け継がれた想いがあって、ともに青春を送った人たちがここに眠っていて、という場所でした。その営みのなかで映画を作ることを大林さんは非常に楽しんだんです、うれしかったんですよ。
入り口はどの作品でもいいと思うので、是非一度来てみて、大林さんが伝えたかった“想い”の原点に触れてもらえればと思います」。

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尾道への強烈な愛情が詰まった『海辺の映画館』は、また新たな世代を“巡礼”へといざなうことだろう。大林監督が亡くなっても、尾道の街並みと共に、その魂は永遠に生き続けるのだ。

取材・文/編集部

写真/黒羽 政士



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