『るろうに剣心 最終章』人吉ロケに潜入!大友啓史監督に尋ねる、佐藤健と新田真剣佑の“運命”
「この現場には、『限界を突破したい』という気持ちで集まってくるんです」
2018年11月4日にクランクインした本作は、翌2019年6月7日のクランクアップまで約7か月にわたって撮影が行われ、その間参加したエキストラ数はのべ6000人。熊本以外にも京都、奈良、滋賀、三重、広島など、大友組がシーンに合った風景を求めて駆けずり回ったロケ地 は、なんと全国43か所にもおよぶ。
なにもかもが規格外で型破りな本作、撮影から数えて実に10年間ともにシリーズを作ってきたスタッフとの久々の共同作業について大友監督に尋ねると、はにかみながら答えてくれた。
「この現場にはみんな、『自分の限界を突破したい』という気持ちで集まってきます。この規模の作品でその熱量に応え、スタッフ全員の才能を昇華するためには、監督として大変な覚悟とエネルギーが必要です。僕にとって『剣心』は10年前、45歳の時に会社を辞めて初めて立ち上げた企画ですが、当時20代後半から30代半ばまでの、とびきり活きのいいスタッフに声をかけた。それから10年のうちに、みんなが色々な経験とノウハウを積み重ね、創意工夫と突破力を兼ね備えた腕利きのスタッフに成長している。いよいよ手を抜けない状況に追い込まれてきましたね(笑)」と、スタッフについて嬉しそうに話す監督の姿からは、撮影の手応えが十二分に感じられる。
「剣心の装いをまとった瞬間、一瞬にして全員があの世界に引き戻されました」
本シリーズの顔と言えば、やはり主人公の緋村剣心役を演じる佐藤健だ。シリーズ第1作の『るろうに剣心』(12)は、佐藤にとっても出世作の「仮面ライダー電王」のあと初めての映画主演作で、ハードなアクションと緻密な演技で観客の心をわしづかみにし、それまでの“イケメン俳優”のイメージを覆した。大友監督は今回の撮影で、佐藤のさらなる成長ぶりに目を見張ったという。
「20代初めに『龍馬伝』で出会い、その後の20代半ばを『剣心』の撮影で、そして20代の終わりを今回の『剣心』で迎えるわけです。当然いろいろな経験を積んできての30歳ですから、その間一人の男として大きく変化しますよね。それは、事前の打ち合わせなどを通してビビッドに感じていたんですね。一方で今回の最初の衣装合わせの時に、彼が剣心の装いをまとった瞬間、一瞬にしてその場にいた全員があの世界に引き戻された。カメラテストに至っては、5年間の溝があっというまに埋まっていくのを感じました。一つの役を覚悟と思い入れと気迫、愛情をこめて演じた人間の身体からは5年たっても役の魂が抜けない。加えて、いよいよ剣心の原点となる物語に踏み込むということで、彼のなかで剣心に対する年相応の理解力や、役に対する愛情がさらに深まっている。撮影しながら、ずっと彼の強い想いを感じていますね」。