『バッテリー』から『恋する寄生虫』に至るまで…幅広い演技で魅了し続ける林遣都のキャリアを振り返る!
“虫”の仕業で惹かれ合った2人の男女の、切ない恋の行方を描いた『恋する寄生虫』(公開中)。本作で林遣都は、超潔癖症ゆえに他人とコミュニケーションをとることができない青年役に挑戦した。今年1月には、動物保護活動を熱心に行う獣医学部生を演じた『犬部!』も公開されるなど、常に話題が絶えない林。2007年のデビュー以来トップを走り続け、気づけば映画やドラマに欠かせない存在となった彼の代表作を振り返っていきたい。
スポーツ青春映画で光る天性の“純粋さ”『バッテリー』(07)『ダイブ!!』(08)
あさのあつこによるベストセラー小説を映画化した『バッテリー』で俳優デビューした林。およそ3000人の応募者の中からオーディションで選ばれ、デビュー早々いきなり主演に大抜擢。野球に打ち込む純粋な主人公にふさわしいまっすぐな演技が人々の心を打ち、日本アカデミー賞をはじめ、多くの新人賞を獲得した。以降、水泳の飛込競技に切磋琢磨する少年たちを描いた『ダイブ!!』や、箱根駅伝をテーマにした三浦しをん原作の『風が強く吹いている』(09)など、さわやかなスポーツ青春映画が彼の初期の代表作となっていった。
当時から損なわれることのない少年のような“純粋さ”は、いまも林を構成する大事な要素の一つと言える。そんな汚れのない存在感が如実に感じられるのが『しゃぼん玉』(17)だ。犯罪を繰り返してきた、愛を知らない青年が、逃亡中に山奥の村で親切な老婆と出会ったことで変化し始める。市原悦子演じる老婆が、たとえ罪を犯した者であろうと青年の本質を見抜いて信じたように、誰もが林演じる青年の更生を願わずにいられなくなった。
難アリキャラも自身のものにした『闇金ウシジマくん』(12)『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』(12)
一方、『闇金ウシジマくん』で演じた純は挑戦的な役柄だった。イベントサークル代表を務めるギャル男のフリーターが伝説の金貸し、丑嶋にじわじわと追い詰められる。原作でも人気のキャラクターである純だが、林が演じれば、どんなにチャラいやつでもそこに人間性が見えてくる。普通の人がちょっとしたことで転落していく怖さ。それこそが作品の訴えたいテーマであり、ゆえに、山田孝之演じる丑嶋の相手役には相応な演技力と山田に対峙しても負けない胆力が求められた。
さらに、同じく山田のライバル役という関係性を持つ『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』では、林には珍しいナルシストな役柄だった。林演じる御曹司のリクも変わり者ではあったが、周囲にはリクを上回る超強烈なキャラクターばかり。林の“抜け感”のある演技は、そんな強烈キャラとのバランスを取る役割を果たしていたとも感じられる。
そして、『闇金ウシジマくん』よりも最低な男を演じたといえるのが、『チェリーボーイズ』(18)かもしれない。地方都市に住む25歳の恋愛こじらせ男たちが、童貞卒業をもくろみ繰り広げるドタバタ劇。漫画原作のコメディでも、林がキャラクターではなく“人”であろうとするひたむきさはすさまじい。この作品では、童貞たちが妄想を抱くセクシーなお姉さんを池田エライザが演じているのだが、林演じる国森が、心を弄ばれた彼女に対して暴言を浴びせまくる場面がインパクト大。本番ではあまりに気持ちの入りすぎた林が台本以上の言葉をぶつけ、監督が思わずカットをかけて止めたとか。