『沈黙の艦隊』の舞台裏を徹底解剖!臨場感たっぷりの潜水艦はどのように作られたのか?
かわぐちかいじの同名コミックを、大沢たかお主演&プロデュースで実写映画化した『沈黙の艦隊』(公開中)。世界最新鋭の原子力潜水艦“シーバット”に核ミサイルを積載して逃亡した海江田四郎(大沢)と、彼を追う者たちの熾烈な攻防戦を描く本作は、いったいどのようにして作られていったのか。貴重なメイキング写真と共に、美術、撮影、VFXの観点からその舞台裏に迫っていこう。
“核の国際秩序”というテーマに斬り込み、連載当時様々な論争を生んだ原作を、時代設定を現代に置き換えてアップデートした本作。日本近海で海上自衛隊の潜水艦がアメリカの原子力潜水艦に衝突し、乗員全員の死亡が報じられる。しかし、それは日米の政府が極秘に建造した高性能な原子力潜水艦「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だった。艦長に任命された海江田は、「シーバット」に核ミサイルを搭載して乗員たちと共に反乱逃亡。自らを国家元首とした独立戦闘国家「やまと」の建国を宣言する。
本物の自衛隊員も太鼓判!リアルで精緻な潜水艦が作られるまで
本作の最大の注目ポイントは、スクリーン上で圧倒的な存在感を放つ“潜水艦”と、その内部で繰り広げられる登場人物たちの熾烈な演技バトル。潜水艦シーンの撮影について大沢は「目の前にいない相手との戦いなので、ほぼ心理戦。海江田は状況と相手の言葉だけで戦略を練るという状況がずっと続くので、想像以上に頭が疲労しました」と振り返り、「常に緊張状態ではあるのですが、太平洋に漂っている心地よさのようなものもあったと演じていくうちに気付いていきました」と語る。
そんな海江田が奪う“やまと(シーバット)”と、海江田が元々乗艦していた“やまなみ”、そして深町(玉木宏)が艦長を務める“たつなみ”。これら潜水艦の印象の差別化は、原作者のかわぐちも特にこだわった点だ。松橋真三プロデューサーは「実写化にあたり、原作の時代設定を現代にアップデートしたこともあり、世界最新鋭のやまと艦内をどう創るのかというのが大きな課題でした」と明かす。
その課題に真っ向から挑んだのは、松橋が製作を務めた「キングダム」シリーズにも参加した小澤秀高を筆頭にした美術チーム。実際の潜水艦内部は国家機密事項のため写真撮影ができず、取材に出向いた美術スタッフたちは、自分たちの目で細部まで記録して、そのイメージを基にしながら未知なる最新鋭原潜の発令所を豊かな想像力をもってデザインしていったという。
メガホンをとった吉野耕平監督も「“たつなみ”は狭さや左右非対称で人間くささのようなものを意識していて、一方で“やまと”は広めで教会のように厳かな雰囲気があります。“たつなみ”の中は動きづらいけれど、艦長の深町が激しく動いていて、“やまと”の中は海江田が動かない分、カメラが動けるという設計になっていました」と讃える。単にデザインの差別化を図るだけではなく、それぞれに乗艦する登場人物の差異を表すなど演出面にも完璧に配慮したセットに仕上がったのだ。