西川美和監督全6作品がPrime Videoで見放題配信!デビュー作から『ゆれる』『すばらしき世界』まで役所広司、松たか子らの名演を味わう
直木賞候補となった小説を自らの手で映画化!『永い言い訳』
それまで3年に1本のペースで新作長編を発表していた西川監督だったが、長編第4作『夢売るふたり』から長編第5作『永い言い訳』(16)までは4年の間隔が空く。『永い言い訳』の原作となったのは西川監督が自ら執筆した同名小説で、2015年2月に刊行された同作は第28回山本周五郎賞、第153回直木三十五賞に候補入り。映画監督としてだけでなく小説家としても不動の地位を獲得することになった。
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)は、妻(深津絵里)が旅先で不慮の事故に遭い、親友(堀内敬子)と共に亡くなったという知らせを受ける。その時不倫相手(黒木華)と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の夫(竹原ピストル)と幼い子どもたちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから彼らの世話を買って出ることに。
名優・役所広司の演技にしびれる『すばらしき世界』
役所広司と初タッグを組んだ『すばらしき世界』(21)は、西川監督にとって初めて他者の原作を映画化した作品。佐木隆三が実在の人物をモデルに描いた長編小説「身分帳」の舞台設定を現代に移し、オリジナル要素を交えながら脚色。シカゴ国際映画祭の観客賞とベスト・パフォーマンス賞(役所広司)を受賞したことを皮切りに、国内外の映画賞で高い評価を獲得した。
下町の片隅で暮らす三上(役所)は、見た目は強面で短気だが、まっすぐで優しく、困っている人を放っておけない男。そして実は、人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯だった。社会のレールから外れながらもまっとうに生きようと悪戦苦闘する三上に、番組の取材のために近付く若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)。やがて三上の壮絶な過去と現在を追ううち、津乃田は思いもよらないものを目撃していくことに。
まっとうに生きるということとはなにかという問いを通し、社会と人間のいまをえぐっていく本作。役所が第76回カンヌ国際映画祭男優賞を獲得したヴィム・ヴェンダース監督の『パーフェクト・デイズ』(12月22日公開)の公開が近付くこのタイミングで、日本を代表する俳優の名演を堪能してみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬