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「ウルトラマンには、もっと可能性がある」田口清隆監督が目指す、特撮の未来と“夢”の進む先

インタビュー

「ウルトラマンには、もっと可能性がある」田口清隆監督が目指す、特撮の未来と“夢”の進む先

「シリーズ構成に参加したことで、一本の大きなレールを引くことができた」

『ウルトラマンブレーザー』を含め、メイン監督作でシリーズ構成も兼任することが多い田口。このスタイルはメイン監督登板2作目の『ウルトラマンオーブ』から始まっている。作品全体の世界観を決め、序盤、中盤、最終回などのキーになる回の演出を担当することがメイン監督の仕事で、担当する話数以外はシリーズ構成が流れを作るのが定石だが、初めてのメイン監督作『ウルトラマンX』での経験が、その後のシリーズ構成に積極的に参加する要因になったという。

「メイン監督として思い描いている、最終回に向けてやりたい流れが必ずしもうまくいかないことがある、ということを『ウルトラマンX』の時に強く体感しちゃったんですね。次に『ウルトラマンオーブ』をやるとなった時に、その反省を踏まえて、最終回がどうなるか、中盤にある最終パワーアップがどう作用するのかをまず考えました。その結果、最終パワーアップアイテム=オーブカリバーがシリーズ全体を通して一番重要なアイテムとして第1話から登場することになって、それに付随してヒロインやほかのキャラクターの流れを決めていったことで、一本の大きなレールを引くことができたんです」。

放送終了後に発売された「ウルトラマンオーブ完全超全集」では、『ウルトラマンオーブ』のテレビシリーズが「ウルトラマオーブエピソード10構想」に含まれる10エピソードのうちの一つであったことが明かされ話題を呼んだ。

「テレビシリーズのあとに作られたスピンオフ『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』でオーブの過去が描かれましたが、ちょうど劇場版を監督していたこともあり僕はノータッチでした。このスピンオフとテレビシリーズの整合性をとりたくて考えたのがエピソード10構想です。脚本の中野貴雄さんとプロデューサーの鶴田由伸くんと考えたこの構想は、結果的に円谷プロの公式設定ではなく“私案”という形で発表することになりました。そのこと自体は悔しくもあったのですが、その後『ウルトラマンZ』に携わっているなかで“すべては宇宙の噂話”という解釈を思いついて。テレビシリーズの出来事は、地球で観測されているのでいわば“真実”です。でも、宇宙で起きていることは僕たちには観測できないので“噂話”。そう考えると、色々なことが腑に落ちたんです。その経験が活きたのが『ウルトラマンブレーザー』で、ウルトラマンの過去に関しては一切描かず、地球で観測できたことのみに絞ることでSFとしてリアリティを生む。シリーズ構成を手掛けたことで、徹底して世界観を統一することができました」。

「ゴジラ、ガメラ、ウルトラマンの新作が公開された1995年は、恵まれた時代でした」

1980年に北海道室蘭市で生まれた田口。当時の特撮業界というと、「ウルトラマン」シリーズは1980年に『ウルトラマン80』が放送されて以降、1990年の『ウルトラマンG』までシリーズの新作がない期間、「仮面ライダー」シリーズも1980年の『仮面ライダースーパー1』以降、1987年の『仮面ライダーBLACK』まで新作シリーズのない空白期間の真っ只なか。そんななか、田口少年が出会ったのは深夜に再放送されていた『ウルトラQ』と『ウルトラセブン』だったと振り返る。

「物心ついた時にはウルトラ怪獣の図鑑を持っていて、4歳の時にはおじいちゃんと1984年の『ゴジラ』を観に行っていました。いつから特撮好きだったかは本当に覚えてないんですよ。そこで再放送に出会い、『ウルトラQ』がすぐ好きになりました。レンタルビデオで様々な特撮ものを借りてきて観て、さらにハマっていきました」。


そして1995年から翌年にかけ、特撮界にビッグバンが起こる。「平成ゴジラ」シリーズがクライマックスの『ゴジラVSデストロイア』(95)で最高潮に盛り上がるなか、同年ガメラ生誕30周年記念作『ガメラ 大怪獣空中決戦』が公開。批評家からも絶賛を受けて「平成ガメラ」シリーズが始まり、さらに翌1996年には『ウルトラマン80』以来16年ぶりとなるテレビシリーズ『ウルトラマンティガ』がスタートし、田口は両作から人生が変わるほどの大きな影響を受けることになる。

「当時僕は中学生で、映画監督になりたくて自主映画作りに没頭していました。そのなかで『平成ガメラ』に出会い、樋口真嗣監督が特技監督を手掛けられていることに気づいて目標とするようになりました。そして高校生になった時に『ウルトラマンティガ』の放送が始まって、進む道が決定づけられたような気がします。ゴジラ、ガメラ、ウルトラマンの新作が相次いで公開されていたあのころは、すごく恵まれた時代だったんだなって改めて思いますね」。

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