第68回カンヌ国際映画祭の注目点を開幕前にチェック
現地時間5月13日から24日まで、第68回カンヌ国際映画祭が開催される。今年は審査員長が史上初の兄弟ふたり。いつも一緒のコーエン兄弟が務めることになった。2人で意見が割れたらどうするんだろう…という心配はコンペを見てからにしよう。
今年は日本作品の上映がとても多い。並行週間を加えると7本もある。うち旧作が3本あり、新作はそれぞれカンヌの常連と言っていい監督たちの作品だ。
●公式上映
是枝裕和監督 『海街diary』(6月13日公開) コンペティション
河瀬直美監督 『あん』(5月30日公開)ある視点(オープニング)
黒沢清監督 『岸辺の旅』(秋公開)ある視点
溝口健二監督 『残菊物語』(1939)カンヌ クラシック
深作欣二監督 『仁義なき戦い』(73)カンヌ クラシック
黒澤明監督 『乱』(85)シネマ ドゥ ラ プラージュ
●並行週間
三池崇史監督 『極道大戦争』(6月20日公開)監督週間
さらにコンペ出品作のうち、ガス・ヴァン・サント監督の『THE SEA OF TREES』にはブロードウェイで「王様と私」に出演中の渡辺謙が、ホウ・シャオシェン監督の『黒衣の刺客』(秋公開)には妻夫木聡が出演している。こんなに日本人だらけのカンヌは、15年通っている私にとっても初体験である。日本勢の健闘を祈りたい。
今年のコンペティションのラインナップをご紹介しておこう。
ジャック・オディアール監督『DHEEPAN』…スリランカのタミール人兵士だったという人物がフランスに逃げてきてパリ近郊で管理人として働いているのだが…。
ステファヌ・ブリゼ監督『THE MEASURE OF A MAN』…『母の身終い』(12)のブリゼ監督が再びヴァンサン・ランドンと組む。
ヴァレリー・ドンゼッリ監督『MARGUERITE & JULIEN』…『私たちの宣戦布告』(11)のドンゼッリ監督の新作。
マイケル・フランコ監督『CHRONIC』…「父の秘密」で第65回のある視点部門グランプリを獲得したフランコ監督がティム・ロス主演で描く、終末期の看護に携わる在宅看護士の物語。
マッテオ・ガローネ監督『TALE OF TALES』…『ゴモラ』(08)『リアリティー』(12)でカンヌ受賞経験のあるガローネ監督がサルマ・ハエック、ジョン・C・ライリーなどスターを迎えて撮影。
トッド・ヘインズ監督『CAROL』…デパートで働く娘と裕福な人妻の恋を描く。ルーニー・マーラ、ケイト・ブランシェット出演。
ホウ・シャオシェン監督『黒衣の刺客』…唐時代、誘拐され暗殺者に仕立てられた娘が暴君の命をねらう。スー・チー、チャン・チェンと妻夫木聡が共演する。
ジャ・ジャンクー監督『山河故人(原題)』…1999年・2014年・2025年の三つの時代にわたって、山西省の女教師と彼女に恋する二人の男の葛藤を描く大河ドラマ。
是枝裕和監督『海街diary』…鎌倉に住む三姉妹は亡き父が遺した腹違いの妹を引き取り4人で暮らしていく。吉田秋生の漫画が原作。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず出演。
ジャスティン・カーゼル監督『MACBETH』…マイケル・ファスベンダーとマリオン・コティヤールが演じるシェイクスピアの「マクベス」。
ヨルゴス・ランティモス監督『THE LOBSTER』…荒廃した近未来。独身者は45日以内に伴侶を見つけられなければ動物に変身させられ森に放たれる。コリン・ファレル、レア・セドゥ、レイチェル・ワイズが出演。
マイウェン監督『MON ROI』…『パリ警視庁:未成年保護特別部隊』(11)でカンヌの審査員賞を受賞した女優兼監督のマイウェンの作品。ヴァンサン・カッセル主演。
ナンニ・モレッティ監督『MY MOTHER』…監督の亡き母の自伝を、アメリカ人俳優とイタリア人女性監督夫婦の葛藤を交えて描く。モレッティは兄役で出演。ジョン・タトゥーロ主演。
ラズロ・ネメス監督『SON OF SAUL』…1944年のアウシュビッツ。焼却される死体の炎の中から少年の遺体を探しだし、息子に与える囚人が…、というホラー。ハンガリー映画。
ギョーム・ニクルー監督『VALLEY OF LOVE』…2014年の第13回トライベッカ映画祭で脚本賞を受賞した監督の作品。ジェラール・トパルデュー、イザベル・ユペールなどフランスのスターが出演する。
パオロ・ソレンティーノ監督『YOUTH』…アルプスのふもとの優雅なホテルで、引退したばかりの作曲家フレッドと現役の映画監督ミックという旧友が休日を過ごす。レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、マイケル・ケインが出演。
ヨアキム・トリアー監督『LOUDER THAN BOMBS』…ヨアキムはラース・フォン・トリアーの甥。初の英語作品でジェシー・アイゼンバーグ、エイミー・ライアンが出演する。
ガス・ヴァン・サント監督『THE SEA OF TREES』…自殺志願のアメリカ人と日本人の友人が富士の樹海で道に迷い出口を探す。マシュー・マコノヒーと渡辺謙、ナオミ・ワッツが共演する。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『SICARIO』…若き女性FBI捜査官がCIAのメキシコ麻薬組織秘密捜査に加わり人格の危機に直面する。エミリー・ブラント、ジョシュ・ブローリン出演。
オープニングとクロージングは招待作でコンペ外になるので、この19本でパルム・ドールが争われる。どんな結果になろうと2000本を越える応募作から選ばれたコンペ作品である。常連と新しい監督がバランスよく挙げられたコンペ出品作、どの作品も見ごたえがありそうだ。
まもなく、世界最大の映画祭が開幕、11日間の祭りが始まる。【シネマアナリスト/まつかわゆま】