いくらなんでも自由すぎる!実写版『チップとデールの大作戦』を徹底レビュー
いくらなんでも自由すぎる!豪華すぎる小ネタの数々
実写の映像のなかに古きよき2Dアニメのキャラクターが登場する。この方法論は名作『メリー・ポピンズ』(64)やディズニーランドの人気エリア「トゥーンタウン」の原点となった『ロジャー・ラビット』(88)でも用いられたおなじみの方法だ。それに加え、近年では実写と3DCGアニメーションが混在する“ハイブリッド”作品と呼ばれるものも数多く作られるようになっている。
本作では実写と2Dアニメ、3DCGアニメ、さらにはクレイアニメのキャラクターまでもが一つの画面のなかに次々と登場する、“ハイブリッド”の極致を実現。しかも誰もがよく知るアニメキャラクターたちが“俳優”として生活する世界を描くことで、実写とアニメの垣根が完全に取り払われた多様性に富んだ画面が展開し、いつしか現実との境界も取り除かれてしまうような錯覚をおぼえるほど。危機に陥ったアニメ俳優たちを救うために奔走するというプロットも然り、これはまさにチップとデールによる究極の『ロジャー・ラビット』といったところだろう。
そのバトンタッチを示すかのように、映画序盤には『ロジャー・ラビット』の主人公ロジャー・ラビットがチラリと登場。さらに『三匹の子ぶた』(33)の子ぶたたちや、『美女と野獣』(91)のルミエール、マーベルキャラクターのティグラ、実写版『ジャングル・ブック』(16)のバルーなどディズニー関連のキャラクターが続々と登場。また、悪役としてチップとデールの前に立ちはだかる“スイート・ピート”は、まさかのディズニーの名作アニメ『ピーター・パン』(53)のピーター・パン。おじさんになって邪悪になったその姿は、なかなか衝撃的だ。
劇中には、ディズニー作品に限らずありとあらゆる作品のキャラクターが登場する。チップが自宅のテレビで見るCGアニメは、同じシマリスのキャラクターである「アルビン」シリーズの作品であったり、保険会社にやってくるヒツジのビジュアルはアードマンの「ひつじのショーン」と同じデザイン。ドリームワークスの「シュレック」にいたっては、まったく売れなかったシュレックグッズを溶かして再利用されるという、かなり挑戦的な扱いを受けており、いったいどんな許諾を取れば実現できたのかと思うようなシーンが次から次へとやってくる。
さらには「ソニック・ザ・ムービー」の第1作が公開される前に騒動になった、ボツデザインのソニックが“アグリー・ソニック”として大活躍。路地裏ではこちらもデザインが物議を醸した『キャッツ』(19)のネコたちがケンカしていたり、街の看板にはメリル・ストリープが『ミセス・ダウト』(93)のパロディを演じ、E.T.とバットマンが共演(!)したり、「アントマン」シリーズでおなじみのポール・ラッドや、意味もなく現れるヴィン・ディーゼルなど、とにかくやりたい放題のお祭り騒ぎ。
かなり細かいところにまで目を配れば、『Mr.インクレディブル』(04) のフロゾンが食品のパッケージにデザインされていたり、スイート・ピートに捕まり改造されたキャラクターたちのパーツが掲げられている壁には「トイ・ストーリー」のミスター・ポテトヘッドから、「ドラゴンボール」の神龍まで確認することができる。序盤のコンベンションの群衆のなかにはセーラームーンや悟空のコスプレをした人も見受けられ、小ネタを探すだけでもかなり楽しめること間違いなしだ。