いくらなんでも自由すぎる!実写版『チップとデールの大作戦』を徹底レビュー
オリジナルファンの心もつかむ直球の友情ストーリー
映画ファンやディズニーファンの心をくすぐるようなマニアックな小ネタはもちろんのこと、大人も子どもも楽しめるようなシンプルでわかりやすいストーリーも本作の魅力のひとつだ。些細なことで物別れになってしまっていたチップとデールが、仲間の危機を救おうと実生活でも“レスキューレンジャーズ”になり、コンビとしての絆を取り戻す。自由すぎる作品のテイストに呑み込まれそうになるとはいえ、直球の友情ストーリーには胸を熱くせずはいられない。
映画の冒頭は、まだ子どもだったチップとデールの出会いのシーンから幕を開ける。考えてみれば、当然のように一緒にいる2匹がどのように出会ったのかというバックグラウンドはあまり考えたことがなかった。これまでのチップとデールの作品とはまるで世界観が異なるとはいえ、なかなか興味深いものだ。そしてアニメシリーズの「チップとデールの大作戦」を観ていた人なら必ずやワクワクしてしまうクライマックスのチーム再結成の瞬間。
劇中の会話のなかには、実際に作られていないエピソードの話題もたびたび持ち上がるのだが、第55話「ホタルの願いに光を込めて」など実在のエピソードの話にも触れられている。話題に上がったエピソードをチェックして、もう一度本作を観返してみるというのも楽しみ方の一つだろう。
“レスキューレンジャーズ”の5匹全員が集結したとあって、ここから新たな物語が始まりそうな予感がただよう。配信がスタートしてからまだ1週間足らずだが、すでに世界中で続編を望む声が多く寄せられているという。先日「ComicBook.com」のインタビューのなかで、脚本を務めたダン・グレガーとダグ・マントは「まだたくさん語るべきことがある。まだ序章にすぎず、わたしたちにはいくつものアイデアがあります」と続編製作への強い意欲をのぞかせていた。
映像表現としての可能性を最大限に活かしきり、それでいて往年の人気キャラクターにまったく新しい光を当てる。これまで数多く作られてきたリブート映画とはまるで違うキレ味で最大限にはじけてみせた本作が、シリーズ化されるとなれば次はどんな一手が繰り出されるのか楽しみでならない。その際には、是非ともプルートやドナルドダックと再共演してもらいたいものだ。
文/久保田 和馬