「ピース オブ ケイク」「溺れるナイフ」に通じる要素も…ジョージ朝倉の作家性でひも解く「ダンス・ダンス・ダンスール」の魅力
2015年9月から「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載がスタートした、ジョージ朝倉による青春バレエロマン「ダンス・ダンス・ダンスール」。「呪術廻戦」などのMAPPA制作によるテレビアニメが、2022年4~6月にかけて全11話で放送され、ディズニープラスでも国内独占配信中(Blu-rayのVol.1が8月31日(水)に発売予定)だ。その熱く激しくドラマチックな展開が、バレエファンはもちろんのこと、これまでバレエにまったく興味がなかった層も夢中にさせ、大反響を呼んでいる。本稿では、唯一無二の個性を持つ漫画家、ジョージ朝倉の作家性にひもづけて、本作の魅力を紹介したい。
幼少期にバレエに魅了され、姉と同じ教室でバレエを習おうと決めた矢先に、父が死んでしまった少年、村尾潤平(声:山下大輝)。中学2年生になった彼は、アクション監督だった父のように“男らしく”あろうと、バレエへの想いを封印して、格闘技のジークンドーに打ち込んでいた。そんなある日、転校生の五代都(声:本渡楓)に誘われた潤平は、彼女の母、千鶴が経営するバレエスクールに足を運ぶ。はじめのうちは、周囲に隠れて踊っていた潤平だったが、都のいとこであり、天才的なバレエの才能のある森流鶯(声:内山昴輝)と出会ったことで、本気でバレエに取り組むことを決意する。
王道の青春ストーリーながら、ジョージ朝倉独自の作家性にもあふれた「ダンス・ダンス・ダンスール」
1995年に「別冊フレンド」に掲載された短編「パンキー・ケーキ・ジャンキー」で漫画家デビューして以来、パッションがほとばしる絵と中毒性のあるストーリーで、熱狂的なファンを獲得してきたジョージ朝倉。2004年に映画化、2005年に第29回講談社漫画賞少女部門を受賞、2014年にテレビドラマ化もされたオムニバス作品「恋文日和」に、2008年に映画化された異色のラブコメディ「平凡ポンチ」、田口トモロヲ監督、多部未華子と綾野剛主演で映画化された「ピース オブ ケイク」、小松菜奈&菅田将暉主演で映画化された「溺れるナイフ」など、これまでに4作品が実写映像化されている。「ダンス・ダンス・ダンスール」はジョージ朝倉にとって、初のアニメ化作品だ。
バレエ未経験のジョージ朝倉が、クラシックバレエを題材にした本作を描こうと思ったきっかけは、自身の娘が幼いころに通い始めたバレエ教室で、男の子に出会ったことだという。この子がこのままバレエを続けていったら、思春期をどう乗り越えていくのだろう?そんな思いから、それまであまり描かれていなかった男の子が主人公のバレエ漫画が誕生した。
「ダンス・ダンス・ダンスール」は、プロになるためには遅くとも10歳までにはレッスンを始める必要があると言われるバレエを、中2の13歳から習い始めた潤平が、バレエ大国であるロシア最高峰のカンパニー、ダンスール・ノーブル(王子を踊る資格のあるダンサー)を目指しながら成長していく青春ストーリー。少女マンガ誌から青年誌まで、様々なジャンル、年齢層に向けて作品を発表し、どちらかというと、尖った感覚で多くのクリエイターたちをも魅了してきたジョージ朝倉にとって、新境地ともいえるザ・王道エンタテインメントである。スポ根、恋愛、友情、青春といった要素が入った王道バレエ漫画と聞くと、これまでのジョージ朝倉作品とはちょっと違うように感じるかもしれないが、やはりそこには、ジョージ朝倉ならではの独自の作家性が詰まっている。