『ジュラシック・パーク』から30年…「ジュラシック」シリーズの恐竜はどう進化した?SFXの歴史を一挙に振り返る

コラム

『ジュラシック・パーク』から30年…「ジュラシック」シリーズの恐竜はどう進化した?SFXの歴史を一挙に振り返る

現代によみがえった恐竜たちの恐怖を描いたスティーヴン・スピルバーグ監督作『ジュラシック・パーク』(93)。恐竜のDNAからクローンを作りだす説得力ある設定やスピルバーグらしいスリル満点の語り口、なにより生きているような恐竜たちの映像で話題を呼び、シリーズ計6本が製作された恐竜映画の金字塔だ。今年は第1作公開から30年となるアニバーサリーイヤー。「それ以前と以降」として語られる恐竜たちのSFXを中心に「ジュラシック」シリーズを振り返ってみたい。

トーチの火につられるT-レックスなど生き物としての動きが追求された(『ジュラシック・パーク』)
トーチの火につられるT-レックスなど生き物としての動きが追求された(『ジュラシック・パーク』)Film TM &[c] 1993 Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. All Rights Reserved

CGで恐竜を動かすことに挑戦した『ジュラシック・パーク』

『ジュラシック・パーク』と言えばリアルなCG恐竜が思い浮かぶが、第1作のスタート時、スピルバーグが最もこだわったのは恐竜たちを実物大のアニマトロニクスで撮影することだった。そこで『エイリアン2』(86)で4.5mのエイリアン・クイーンを手掛けたスタン・ウィンストンを起用。アクションシーンや歩き回る全身の映像はフィル・ティペットがストップモーション・アニメで動かし、彼の古巣ILMが合成を担当することになった。

ところが『ターミネーター2』(91)のCGを手掛けたILMのスティーブ・ウィリアムズとマーク・ディッペは、CGで恐竜が描けるはずだと密かにT-レックスのCGカットを作成した。プロデューサーのキャスリーン・ケネディ(現ルーカス・フィルム社長)がミーティングでILMを訪れた際、わざと目につくようモニターに表示したところ、映像を見たケネディは「これで歴史が変わる!」と感激。スピルバーグにCGの使用をプッシュし、視覚効果を一変させたデジタル恐竜たちが誕生することになったのだ。

2023年は、『ジュラシック・パーク』の公開から30年
2023年は、『ジュラシック・パーク』の公開から30年Film TM &[c] 1993 Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. All Rights Reserved

CG導入によりストップモーションのキャンセルを言い渡されたティペットがスピルバーグにぼやいた「絶滅した気分だよ」というひと言は、劇中のグラント博士(サム・ニール)とマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)の会話に引用された。ただし、恐竜の演出面にも関わっていたティペットは、恐竜監修として映画に参加。ティペット・スタジオのメンバーもCG作りに参加し、フェンスを破って登場し車を襲うT-レックスや、キッチンで姉弟を追いかけるラプトルの主要カットを担当した。彼らはCG経験がなかったため、センサー付きの恐竜パペットをコマ撮りし、その動きをコンピュータに取り入れるDID(Dinosaur Input Device)を使用。リアルなCG映像を支えていたのはストップモーションだったのだ。

そして、映画に使われた恐竜シーンのうち、約70%はアニマトロニクスで撮影された。ウィンストンのチームは、テーマパーク用アニマトロニクスなどを参考に、5.5mのT-レックスなど首を振りほえる恐竜たちを制作。俳優たちとの密な共演シーンが臨場感をもたらし、以後アニマトロニクス+CGの組み合わせが「ジュラシック」シリーズの基本スタイルとして踏襲された。本作の大成功によって視覚効果のデジタル化が加速し、その威力を目の当たりにしたウィンストンはジェームズ・キャメロンらと視覚効果会社デジタル・ドメインを設立するなど、映画界に新たな波が起こることになった。

アニマトロニクスもシリーズを支え続けた(『ジュラシック・パーク』)
アニマトロニクスもシリーズを支え続けた(『ジュラシック・パーク』)Film TM &[c] 1993 Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. All Rights Reserved

関連作品