純度200%の岡田麿里ワールド『アリスとテレスのまぼろし工場』を映画ファンはどう観た?「恋って激しく強くやるせない」「ラストシーンは涙が出てきた」

コラム

純度200%の岡田麿里ワールド『アリスとテレスのまぼろし工場』を映画ファンはどう観た?「恋って激しく強くやるせない」「ラストシーンは涙が出てきた」

“大人も泣けるアニメ”として社会現象を巻き起こした「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の岡田麿里が、監督と脚本を務めた『アリスとテレスのまぼろし工場』が9月15日(金)に公開となる。先日行われた試写会でいち早く本作を鑑賞した観客からは、「初めから最後まで美しい作画に圧倒されました」(10代・女性)「期待以上の作品に涙が止まりませんでした」(20代・女性)といった絶賛の声が数多く寄せられている。

そこで本稿では、岡田監督が生みだす心打たれるストーリー、アニメーションスタジオのMAPPAによる“神作画”、そして初めてアニメーション映画に主題歌を書き下ろした中島みゆきの楽曲など、いくつかのトピックに分けて寄せられた感想コメントをピックアップ。“恋する衝動”を武器に未来を切り拓こうとする少年少女たちを描く本作の魅力を徹底的にひも解いていこう。

純度200%の岡田麿里の世界をスクリーンで堪能!

製鉄所の爆発事故によって出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす14歳の正宗。町ではいつか元に戻れるようにと、“何も変えてはいけない”ルールが生まれ、変化することは“悪”とされていた。鬱屈とした日々を送る正宗はある日、謎めいた同級生の睦実に導かれて製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは、しゃべることのできない野生の狼のような少女だった。

鬱屈とした日々を送る14歳の少年・正宗の声を担当したのは榎木淳弥
鬱屈とした日々を送る14歳の少年・正宗の声を担当したのは榎木淳弥[c]新見伏製鐵保存会

テレビアニメ「凪のあすから」や映画『心が叫びたがってるんだ。』(15)など、思春期の少年少女の無垢で不安定な心理描写に定評がある岡田麿里作品。初監督作となった『さよならの朝に約束の花をかざろう』(18)は海外の映画祭に出品され、世界的に高評価を獲得するなど、アニメファン以外からも熱烈な支持を集めてきた。そして待望の監督第2作となった本作は、脚本だけでなく、監督としての才能にも惚れ込んだMAPPAの代表取締役である大塚学が、「岡田監督の作りたい世界を徹底的に追求した作品を世に送りだしたい」と決意したことから誕生したという。

「あの花」「凪あす」「ここさけ」、そして『さよ朝』と、少年少女の繊細な心理を描き続けてきた岡田麿里作品
「あの花」「凪あす」「ここさけ」、そして『さよ朝』と、少年少女の繊細な心理を描き続けてきた岡田麿里作品[c]新見伏製鐵保存会

今回の試写会の来場者のうち、「岡田監督がこれまで関わった作品を一作でも観たことがある」と回答した人はおよそ半数。「『あの花』や『GOSICK-ゴシック-』などが好きなのですが、どの作品も、まだ大人のように割り切ることのできない少年少女の葛藤の描写が魅力だと思います」(20代・女性)のように“岡田麿里らしさ”が本作にも顕在であるとの声や、「今までにはない、やや重くて暗いトーンだが、ストーリーが進むにつれ違和感がなくなってきた。ちょっと大人向けの感じがしてとてもよかった」(50代・男性)と、岡田監督の新たな一面が見えたとの声も寄せられていた。

一方、本作で初めて“岡田麿里ワールド”に触れた観客からも「今回の試写会で岡田麿里さんを初めて知りました。無二の世界観をもった方の作品を知れて大変良かったです。次回作もぜひ観に行きたいと思いました。応援しています」(50代・女性)「岡田監督作品は気になってはいましたが、見る機会がありませんでした。繊細ながらも力強い展開でとても素敵な作品でした」(40代・女性)という感想が。いままで岡田監督の作品を観たことがない方も、本作を機に新たなファンになること間違いなしだ。

正宗を導くミステリアスな同級生・睦実の声は上田麗奈が担当
正宗を導くミステリアスな同級生・睦実の声は上田麗奈が担当[c]新見伏製鐵保存会


また、本作で描かれる“変化を禁じられた世界”で新たな未来を切り拓こうとする少年少女たちの姿は、これまでの岡田作品のエッセンスを織り込みつつ、同時に現代社会へ様々な問いを投げかけている。
「『現実とは』『生きるとは』『愛とは』という様々な深く壮大なことがテーマになっていると感じた」(30代・女性)
「変化を禁じられた、求めなくなった世界で登場人物それぞれの思惑で、思いで行動し、変化していく様に『今、いくらでも変化できる時代にいる私は何か出来ているだろうか』と考えさせられた」(30代・女性)

いま岡田麿里が我々に伝えたいメッセージが凝縮された、純度200%の“岡田麿里ワールド”を感じることができるだろう。

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