『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督に独占インタビュー!『燃えよ剣』とのつながりや群衆演出の裏側が明らかに

インタビュー

『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督に独占インタビュー!『燃えよ剣』とのつながりや群衆演出の裏側が明らかに

「涼介には『燃えよ剣』の撮影中から『関西弁を練習しておいて』と話していたんです」

【写真を見る】サプライズキャストについて語る原田眞人監督
【写真を見る】サプライズキャストについて語る原田眞人監督[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

燃えよ剣』からの伏線はまだある。矢代が雀荘を襲撃するシーンで、山田と対峙する岡田准一のサプライズ出演だ。事前に一切情報が明かされていなかったため、スクリーンに登場した瞬間、驚いた人も多いのではないか。その役名は「アロハの男」、衣装のアロハシャツは岡田と原田監督が三度目のタッグを組んだ『ヘルドッグス』(22)で岡田が着ていたものの色違いである。

「涼介とは『燃えよ剣』の撮影中から『次は大阪人の役を考えているから関西弁を練習しておいて』と密かに話していたんです。すると岡田くんは気になって『なになに?』と来るわけですよ。だから1日でいいから出てくれないかとその場で声をかけました。とりあえずは、『ヘルドックス』の冒頭で着ていたようなアロハシャツの男、ということで出てもらうことにしたんですけど、最初はそれしか決まっていなかったんですよ。彼は麻雀の経験がなかったので、そこが一番ネックになったかもしれないけど、さすがに様になるようにやってくれましたね」

ちなみに作品の垣根を超えた役の裏設定はほかにもあり、たとえば宇崎竜童の演じた曼荼羅は、かつて『TATTOO<刺青>あり』(82)で宇崎が演じた大阪弁を話す犯罪者(「三菱銀行猟銃立て籠もり事件」の犯人がモデル)を下敷きに、もし彼が生きていて老年になったとしたら…という発想から生まれたキャラクターである。

「賭場のロケーションは、山田涼介ありきで決めた」

賭場のシーンは『燃えよ剣』で池田屋事件の場面に使われたオープンセットで撮影が行われた
賭場のシーンは『燃えよ剣』で池田屋事件の場面に使われたオープンセットで撮影が行われた[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

原田監督がロケ場所を選ぶうえで一番重視しているのは「個性的であること」だ。「役者を選んで役に当てていくのと同じように、場所自体がキャラクターを持っていて、こちらに刺激をくれるような要素がなきゃいけない」という発言からは、人と同じようにロケーションへの愛着がうかがえる。例えば賭場のシーンに登場するセットは、『燃えよ剣』で池田屋事件のシーンで使われたもの。「なんかなつかしい感じがする」という矢代のセリフも、山田が口にすると、にわかに実感を帯びる。

「あのロケ場所もね、涼介ありきで決めたというか。原作通りの別荘みたいな場所を探してもおもしろいところが見つけられないでいたところ、涼介が出るんだから、あそこはどうかと思い出してね。池田屋のオープンセットは、裏から見るとぺんぺん草が生えていて、打ち捨てられたみたいなイメージがあるんですよ。なおかつ『燃えよ剣』の時に、涼介の沖田総司が2階に上がって突っ込んでいくところで、カメラが横移動するための台座を隣の建物に作っていたんですよね。その間を仕切る壁を取り外せるようにしてあったから、今度は台座の部分を林田(サリngROCK)との見せ場で使えた。あれは『燃えよ剣』を撮って、涼介が沖田総司を演じていなければ、出てこなかった発想でした」
 
撮影が困難な大阪の町中でのロケも、その土地を最大限に生かす驚きの演出術で乗り切った。

詐欺のターゲットに接触して金品を受け取る受け子のリーダー役=三塁コーチのネリ
詐欺のターゲットに接触して金品を受け取る受け子のリーダー役=三塁コーチのネリ[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

「特殊詐欺の金の受け渡しのシーンは、原作通りの新歌舞伎座前〜道頓堀に抜ける路上では撮影許可が出ない。許可が出たとしても一般の通行人を止めるわけにはいかないから、そうなったら勝ち目はない。そこで中之島プロムナードというアイデアが出ました。中之島でも条件は同じですけど、あそこは広いから、手の打ちようがあった。まず、僕の演技ワークショップの生徒から50人ぐらい東京で集めて、サクラと教授役の大場泰正さん、おとり役の一木美貴子さん、吉原光夫ら刑事役も入って、1日かけてリハーサルをしたんです。その時に、ネリがこう動いたら誰がどう動いて、エキストラはどこを歩いているかという、50人の動きのコアになる部分だけを固めたんです。その50人をそのまま中之島に連れて行って、撮影当日はさらに現地で集めた150人ぐらいのエキストラをグループに分けて、50人のうちの誰を参考にして動くかを指示する。結果、総勢200人ぐらいをコントロールして動かしたので、そこに一般の通行人が入ってきてもあまり目立たないんですよね。ハリウッド映画だったら1週間かけるであろうところを、1日もかからずに撮ったわけなんで、いかに我々が器用にやったかを証明するシーンになりましたね」 



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