『カラオケ行こ!』はなぜヒットした?男性同士の特別なつながりを描く“ブロマンス”作品からその理由を紐解く
複雑な役柄ながらも、“聡実のバディ”を見事に演じ切った綾野剛の存在感
大人な面と思春期らしい不安定さを見事に体現した齋藤もさることながら、狂児の複雑な魅力を見せつけた綾野の力量も特筆に値する。綾野はこれまで数多くの作品に出演して様々な役柄をこなしてきており、『日本で一番悪い奴ら』(16)や『64-ロクヨン- 前編/後編』(16)といった硬派な作品のイメージが強い方もいると思うが、2020年に放送されたテレビドラマ「MIU404」ではコミカルな演技を披露。こちらもバディもので綾野は星野源扮する規則に忠実な刑事と組む、彼とは正反対に明るく破天荒な刑事を振り切って演じている。
今回の狂児役はどちらの面も併せ持ち、綾野は強面のヤクザでありつつ笑える要素を盛り込んだキャラクターを構築。さらに、聡実を見つめる狂児の目は父性にも似た慈愛を感じさせ、時には包容力で包み込む。聡実の心のなかに入り込み、彼にとってなくてはならない人物にまでなることに大きな説得力をもたらしている。あんなにかけ離れた存在だった聡実と狂児の結びつきは涙さえ誘い、胸を熱くさせるのだ。
男子中学生とヤクザが織り成すブロマンスが笑いと感動をも与えてくれる『カラオケ行こ!』。ここに述べてきたように、これまで話題となったブロマンス作品との共通事項が多く、ヒットを放ったことが納得できる。多様な魅力があって何度でも観たくなる作品だ。
文/牧島史佳
『カラオケ行こ!』
2024年8月7日発売予定:Blu-ray 豪華版(特典DVD付)8,580円(税込)/DVD通常版4,400円(税込)
発売元・販売元:KADOKAWA
[c]2024『カラオケ行こ!』製作委員会
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g302404006066/