『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督に独占インタビュー!『燃えよ剣』とのつながりや群衆演出の裏側が明らかに

インタビュー

『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督に独占インタビュー!『燃えよ剣』とのつながりや群衆演出の裏側が明らかに

撮影から2年越しで初日を迎えた映画『BAD LANDS バッド・ランズ』(公開中)。舞台挨拶では原田眞人監督より「前日譚を撮りたい」という発言が飛び出し、主演の安藤サクラ山田涼介も前向きに意欲を示すなど、チームの熱量はなお高まりを見せている。そんな注目が集まっている本作の原田監督にMOVIE WALKER PRESS独占でロングインタビューを敢行。作品の肝である群衆演出術や、サプライズ出演している豪華キャストの裏話まで、原田監督によるネタバレ解禁、伏線回収しまくりのビハインドストーリーをお届けする。
※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

「特殊詐欺グループの分業システムを大阪弁のフィルム・ノワールに」

原田監督は原作刊行当初から映画化を熱望していた
原田監督は原作刊行当初から映画化を熱望していた[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

「オレオレ詐欺」の歴史は意外と古い。身内を装って金銭を振り込ませる詐欺事件は90年代から存在し、2004年には「振り込め詐欺」という呼び方を警視庁が命名。2010年代に入ってからは、多様化する手口に対応して「特殊詐欺」の名称が使われるようになった。犯罪が“進化”するにつれて、犯行はグループによるチームプレーとなり、いまや高度に組織化された企業のような様相を呈している。その実態を詐欺師側の視点も含めて描いた黒川博行の小説「勁草」を、原田眞人監督が手に取ったのは、刊行直後の2015年。自ら名乗りを挙げた映画化にあたっては、どんなモチベーションを感じて企画を立ち上げたのか。

「特殊詐欺グループの分業システムが細かく書かれていて、その中の人間模様が、ピカレスクロマンとしておもしろいなと思ったんですよね。それを発展させたら大阪弁のフィルム・ノワールにできるなと。大阪弁の言葉遣いもすごくよかったので、そのリズムをセリフに活かしたいと思いました。以前から関西の演劇人と一緒に仕事をしたいと思っていて、大阪が舞台ならばかなりの規模でそれが叶うという魅力もありましたね。また、原作では詐欺師の橋岡とふれあい荘の老人たちの関係はビジネスライクに書かれているのですが、映画ではもう少し情の通ったものにして、なんらかの優しさを感じさせる主人公にしたいなと。そこから“持たざる者同士の連帯”というテーマにつながっていきました」

「名作映画の主人公は必ずアンビバレンスを背負っている」

血のつながらない姉弟・ネリとジョーのバディ感は安藤と山田の芝居と連動していた
血のつながらない姉弟・ネリとジョーのバディ感は安藤と山田の芝居と連動していた[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

原田作品には初参加となる安藤サクラとのコラボレーションは、原作で男性だった橋岡を、ネリという名の女性にしたことから実現した。脚本では安藤自身のルーティンも取り入れ、ネリのキャラクターとして反映されている。

「僕の映画ではいつも、撮影前にキャスト全員が集まって台本の読み合わせをするんです。その休憩時間に、どこからかワーッと声が聞こえてきて、誰かが騒いでいるんですよ。あれはなにかと聞いたら『安藤さんが声出しをしています』と。撮影が始まってからもその習慣は続いていたので、本編のどこかで取り入れたいなと思っていて、実の父である高城の靴を舐めるという、ネリにとって一番屈辱的な思い出を振り払うところでサクラにやってもらったんです。橋岡を女性にした時、高城との関係に血のつながりを作れば、いざという時に異父弟である矢代穣と高城のどちらを助けるかというドラマも描けると思いました。名作映画の主人公は、必ず重たいアンビバレンスを背負っているものです」

ネリの異父弟である矢代穣は、山田涼介が沖田総司を演じた『燃えよ剣』(21)の撮影中からイメージがあったそう。原田監督いわく「沖田総司が現代に蘇ったらこういうサイコパスになるだろう」という見立てのもとに、山田が演じることを想定してアテ書きされた。

『燃えよ剣』に続いて原田監督作への出演となった山田涼介
『燃えよ剣』に続いて原田監督作への出演となった山田涼介[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

「沖田総司はだんだんと病んで弱っていく役どころで、さらに時代劇という縛りもあったから、溌剌としている部分を感じることはあまりなかったんだけど、今回の涼介はどんなことをやっても楽しんでいる部分があって、しかもそれが絶対に的を外さないんですよね。その上でプラスアルファのアドリブもどんどん出してくれた。それはやはり時代劇ではどうしてもできなかったこと。サクラとのキャッチボールを楽しんでいるなというのも、現場で見ていてすごく感じましたね」



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