不器用な親父と息子の紡ぐ愛にグッとくる『とんび』…時代を超えても変わらない家族の絆に泣ける名作10選
ドラマ化もされた重松清のベストセラー小説を、『護られなかった者たちへ』(21)などの瀬々敬久監督が映画化した『とんび』が4月8日(金)に公開される。阿部寛と北村匠海というベテラン&若手の実力派コンビが共演。妻を失った男と、彼に男手ひとつで育てられた息子が固い絆を育んでいく様を描いた感動作だ。
これまでも、“家族の絆”を映した名作は数多く誕生してきた。時代ごとに人との関わり方に変化はあれど、家族の愛情が変わることはない。そこで今回は、『とんび』公開を機に、2010年代以降の“親子”や“家族”の愛をテーマにした感動作を10作品ピックアップして紹介していく。
いつの世にも変わらぬ父子の絆を映しだす『とんび』
昭和時代の瀬戸内海に面した小さな街を舞台にした『とんび』は、運送業に従事するケンカっ早い頑固親父、ヤス(阿部)と、優しく賢い一人息子のアキラ(北村)という、正反対の父子を描く人情物語。
幼いころ、母を事故で亡くしたアキラは、不器用なヤスと衝突しながらも、周りの大人たちに見守られて育っていく。劇中では、中学生のアキラを叱りすぎたヤスがお詫びのケーキを用意したり、東京の大学に進学するアキラが父宛に手紙をしたためたりと、面と向かって素直に愛情表現できない父と息子それぞれの姿にホロリとさせられる。ヤスとアキラが、それぞれ妻、母という大切な存在を失い苦悩しながらも、互いにまっすぐ向き合っていく姿を見ると、自身の家族への想いを改めて考えずにはいられない。
ポジティブな家族愛があふれる『浅田家!』『湯を沸かすほどの熱い愛』
二宮和也主演の『浅田家!』(20)は、自分の家族をユニークな視点で撮影することで知られる実在の写真家、浅田政志の実話を基にしたハートウォーミングな人間ドラマ。家族を巻き込みユニークなコスプレ写真を撮る政志だが、東日本大震災で泥にまみれた写真を洗って家族のもとに返すボランティアを行ったことをきっかけに、“写真が持つ力”を改めて考え始める。政志の家族や、政志が出会う家族の姿に心が温かくなる。
『浅田家!』と同じ中野量太が監督を務めた、宮沢りえ主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)は、余命わずかのヒロイン、双葉が、娘の不登校や夫の放浪癖、稼業である銭湯の経営不振などの問題に正面から立ち向かっていく。持ち前の強さと明るさで、愛する者のために残りの人生を駆け抜ける双葉の勇姿に、きっと勇気づけられるはず!
“喪失”に試される家族の絆 『そして、バトンは渡された』『この世界の片隅に』
2019年の本屋大賞受賞作を永野芽郁、田中圭、石原さとみの共演で映画化した『そして、バトンは渡された』(21)では、血のつながらない娘と父、元夫の連れ子を育てながら再婚を繰り返すシングルマザーの、2つの物語が紡がれる。家族の“秘密と嘘”がしだいに明かされていく、ミステリアスでせつない展開が泣けると話題を呼び大ヒットとなった。
のんがヒロインの声を務めてロングランヒットとなった『この世界の片隅に』(16)は、1944年の広島を舞台にした戦争アニメ。日本一の軍港を望むことができる小さな村に嫁入りしたばかりののんびり屋のすずは、物不足に苦労しながらも慣れない主婦業に精を出していた。しかし戦況が徐々に悪化し、村は戦火に飲み込まれていく。お見合いという形での出会いだったものの、互いに愛し合う夫や、優しい義両親に恵まれ穏やかな暮らしを送っていたすず。しかし、瞬く間に大切なものを奪われ、天真爛漫な彼女が一人悲しみに暮れていく。そんなすすが家族に支えられて再び未来へ向けて歩みだす姿が心に深く残る。