不器用な親父と息子の紡ぐ愛にグッとくる『とんび』…時代を超えても変わらない家族の絆に泣ける名作10選
“母とは、父とは、なにか”を問いかける『八日目の蝉』『おおかみこどもの雨と雪』『そして父になる』
『八日目の蝉』(11)は、角田光代の小説を、井上真央と永作博美の共演で映画化したヒューマンサスペンス。不倫相手の赤ん坊を誘拐して育てた女性の逃亡劇と、彼女に育てられた赤ん坊のその後の運命を描く。加害者と被害者の関係でありながら、親子でもある2人が見せる愛憎劇に圧倒されつつも、親子の在り方や心のつながりを考えさせられる。
細田守監督によるオリジナル長編アニメ『おおかみこどもの雨と雪』(12)は、若き母親がオオカミ男の血を引く娘と息子を一人で育てる奮闘記。夫と死別し、子育てのために都会から離れ自然豊かな山奥へ引っ越した一家。大自然に囲まれのびのび成長していく子どもたちだったが、しだいにオオカミとしての本性をのぞかせていく…。子どもたちの成長と葛藤、それぞれが選んだ道を受け止めるたくましい母親の姿が勇気を与えてくれる。
福山雅治の主演作『そして父になる』(13)では、出生時に息子を取り違えられた2つの家族の交流が描かれる。本当の息子、そして育てた息子との関係に戸惑う、エリート志向の主人公、良多の苦悩を福山が体現。是枝裕和監督が「父性」の本質に鋭く迫る。
家族や周囲の人々の優しさに包まれる『ALWAYS 三丁目の夕日’64』『東京家族』
高度経済成長期の東京下町を舞台に、町工場「鈴木オート」一家を中心とした住人たちの群像劇を描く、シリーズ3作目『ALWAYS 三丁目の夕日’64』(12)。東京オリンピックの開催を目前に控え、世間が浮き立つ1964年。「鈴木オート」の住み込み従業員の結婚話や、居酒屋の女将で町のマドンナの出産、お騒がせな小説家のスランプなど、町の住人たちがたびたび騒動を起こしながらも互いに支え合う様子をドラマチックに映しだす。
一方、『東京家族』(12)は、東京で暮らす3人の子どもたちと、田舎から彼らを訪ねてきた老夫婦のすれ違いを静かに描写する。小津安二郎の不朽の名作『東京物語』(53)を、山田洋次監督が橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、妻夫木聡、蒼井優ら各世代の実力派俳優を集め、現代版にリメイクした意欲作だ。
十人十色の家族模様が、時に生き生きと、時にシリアスに語られる家族の物語。自分たちの経験と重なり、笑いあり涙ありの物語はよりいっそう味わいが深まる。ぜひこれらの作品を振り返りながら、自分の家族や大切な人との関係に想いを重ね、『とんび』を深く味わってほしい。
文/水越小夜子