今知っておきたい!アメリカ映画は黒人と差別の問題をどう描いてきたか
世界を変えようとしたカリスマたちの実像
人々が人種差別の状況を変えようと立ち上がった例は、決して少なくない。黒人の側からカリスマ的な指導者となる者も現われ、彼らは映画に描かれることで永遠の魂を得た。女性活動家ハリエット・タブマンの人生をつづった『ハリエット』(19)は記憶に新しいところ。
1950〜60年代の公民権運動が激化した時代には、マーティン・ルーサー・キングJr.とマルコムXという2人のリーダーが支持を得たが、前者は『グローリー/明日への行進』(14)でその苦悩が、後者は『マルコムX』(92)でその激闘が描かれた。
また、黒人の地位向上に大きな役割を果たした人物にスポットを当てた作品も多く、黒人メジャーリーガーのパイオニア、ジャッキー・ロビンソンの孤独な闘いを明かす『42〜世界を変えた男〜』(13)などがある。いずれもズッシリと重い力作だ。
激しい怒りの発露もフィルムに焼き付ける
人種対立は抗議運動を引き起こし、暴力や略奪が横行する暴動に発展したこともあるのは、ブラック・ライブズ・マター運動でもしばしば報道されている周知の事実。こうした社会的な危機は映画にも取り上げられ、警鐘を鳴らし続けている。
『デトロイト』(17)の舞台は1967年に起きたデトロイト暴動中の夜。白人警官が罪のない黒人を暴力によって屈服させるモーテルでの尋問シーンは衝撃的だ。また、複数の警官がひとりの黒人容疑者を暴行した“ロドニー・キング事件”に端を発する'92年のLA暴動も、いくつもの映画で扱われている。米国映画ではないものの『マイ・サンシャイン』(17)は、この暴動で混乱に直面した一般市民の胸中を見据えた作品として印象深い。
また、スパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)やベストセラー小説に基づく『ヘイト・ユー・ギブ』(18)はフィクションだが、暴動の要因となる人種間の軋轢がリアルに捉えられている。